7-55【従姉妹《ジルとエリリュア》2】



従姉妹ジルとエリリュア2◇


「「「……」」」


 部屋に入って直ぐに気付いた。

 どうして三人で同じ部屋に入るんだよ、と。


「なんでみんなで一緒に俺の部屋なんだよ、ビックリしちまったよ……普通に」


 入り終わってから言うのも変だが、ルーファウスもミーティアも、どうしてこうスーッと入っちゃうかな。


「いやぁ……流れでつい」


「そうね、私もビックリしちゃった」


 急造の拠点は、お世辞にも広くは無いし綺麗ではない。

 外見だけは、少し無理をして整えたが……個々の部屋なんてマジでただの壁だぞ。

 もし地球で内見でもされたもんなら、詐欺レベルでうったえられそうだ。


「まぁいいけどさ、ジルさんたちの話が終わるまで……すること無いぞ?」


「僕は別にいいですよ」


「私も……特には?」


 チラチラと見なくてもいいだろミーティアさん。

 秋まで一緒の部屋で暮らしていたでしょうに……それに、今後はさ。


 そんな事を考えながら、俺たち三人はジルさん待ちの暇をすることになるのだった。





 場所は変わり、リビングには対面でジルリーネとエリリュアが座った。

 エリリュアの部下であるサイグス・ユランドとニュウ・カラソラードルはエリリュアの後ろで待機している。


「本当に御久しくございます……従姉上あねうえ


「そうね。かれこれ、十数年かしら」


「――四十五年です」


 十数ではなく、数十だった。


「そ……そう」


 ほほから汗を垂らし、ジルリーネは笑う。苦笑いだが。


「はい。手紙でのやり取りはずっとありましたが、こうしてお顔を拝見するのは……本当に……」


 感慨深かんがいぶかそうなエリリュアに対して、ジルリーネは居心地が悪そうだった。

 エリリュアの後ろを見れば、更に目をかがやかせて自分を見る同族の視線を感じ、非常にやりにくい。


「そんな事はいいから。で……エリ、ここに来たのは何用?」


 さっしはついているが、念の為に問う。


「あ、はい!従姉上あねうえ……実は陛下に、最近の動向が全部、それはもう全部、筒抜けになりまして……面目めんぼくありません」


 テーブルに両手をついて、エリリュアは額をこすりつける勢いで頭を下げた。


「そうか……流石に女王、母だな」


 感心半分、恐怖半分のジルリーネ。

 極力他者を頼って、数十年を諸外国で過ごしてきたが、都合のいい時だけ連絡をしていたと言う後ろめたい思いもあり、エリリュアを叱るなど出来る訳も無かった。


「そこでなのですが、従姉上あねうえ……」


「ん?」


 嫌な予感と言うものは、それ相応の時に訪れる。

 ジルリーネはいずれいずれと、先延ばしにしてきた付けを払う時が来たのだと思う事になる……そしてそれは同時に、ミオとミーティア……二人の快復に繋がる功績になるという事を、この時はまだ知らない。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る