7-49【森の番人4】



◇森の番人4◇


 エルフ王家の血縁者、それがこのエリリュアさんって女性の正体か。

 女王の妹の娘さん、手っ取り早く言えばジルさんの従妹……そう分かってしまえば、似てるかも知れないね。美人だわ。


「で、俺たちはなんで声がけされたんですか?」


 そう、まだ具体的な話は聞けていない。

 この人がエルフ王家の血筋で、ハイディングをしながら近付いてきた……それしか分からん。


「……私たちは、この森を守護する役目を承っております。範囲は狭く、奪われた土地で隠れながらにはなりますが、生まれた森には変わりありませんから」


「森の守護……番人ってことですか?」


 ファンタジーではよく聞くかもな。

 でもそうか……確かにここは、【パルマファルキオナ森林国】の領地だった場所で、ジルさんも初めから森の構造を知っていたからこそ、俺たちはここで隠れているんだ。

 森が燃えて、土地が減らされて……それでも守って来たんだ。


「はい。魔物や……闇ギルド【常闇の者イーガス】の者たちから」


「……あ」


 俺は気付いた。

 この人が声を掛けてきた理由。


「もしかして、ここ三ヶ月……俺たちが森の魔物を倒してたから?」


 森の守り人をしているこの人たちの仕事を、知らず内に奪ってたのか。


「な、なるほど……僕も魔物を倒して回っていました」


 ルーファウスも、俺たちと出会う前は旅をしてきていて、実際に魔物を追って森の中で出会ったんだもんな。

 ほほを搔きながら、ルーファウスは苦笑いだ……もしかしなくても、相当倒してるね?


「はい。恥ずかしながら、その通りです……知人にも、黙っていてくれと頼まれていたので……黙認を続けようとしていたのですが、最近の動向を女王陛下にバレてしまいまして」


 恥ずかしそうに、エリリュアさんは目をつぶって眉をひそめる。

 いや……俺らが勝手に魔物を倒してただけだしなぁ。

 しかも俺はほぼ何もしてないし……しまいには倒してたのは、ハーフエルフのイリアが主だぞ。これは言いにくい。


「あの……もしかしてなんですけど、その知人って言うの……ジルさ――ジルリーネさんじゃないですか?」


 一応王女様だし、愛称で呼んでるのバレたら怒られるかもだし。


「――はい。その通りです……」


 ジルさん、この人と連絡とってたのか。

 そしてそれが、母親である女王陛下にバレた……と。

 最近なんか、ジルさんが一人で葛藤かっとうしてたのってもしかして。


従姉上あねうえには怒られる覚悟でお願いします。ジルリーネのもとへ、案内をお願いできませんか?」


 深々と頭を下げるエリリュアさん。姿勢がいいですね。


 でもなるほど、この人の本当の目的はジルさんか。

 女王にバレたことが原因だな、きっと。

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