7-47【森の番人2】



◇森の番人2◇


 俺がルーファウスと二人、若者らしく森の中で駄弁だべっていると。

 パシュン――、と魔物の死体が【魔力溜まりゾーン】に還った。


「お、消えたな」


「ですね、一分くらいかかりました」


 喋りながら数えてたのかよ。体内時計凄いなルーファウス。

 俺なんて体感、五~六分くらいだったぞ。


「あ、素材が落ちましたよミオくん……これは牙ですね。もしかして、貴重なんじゃないですか!?」


「おお、ラッキーだな!うわ……鋭利えいりな牙だなぁ」


 まるでサーベルのようだ。

 牙と言うには長く、剣というには短いのだが、確かにこれは貴重そう。


『――ご主人様が倒せていれば、この素材のグレードアップ版がドロップしますけどね』


 嫌味を言うなよウィズさん。

 俺が動ければそうするけど、出来ないからこうしてルーファウスを頼っているんだ。黙って感謝しておこうぜ。


 しかしまぁ、ウィズがそう言った事を言うのも理解は出来る。

 俺の能力――【強奪ごうだつ】は、強制的に魔物の素材をドロップさせる。

 それも百パーセント、しかも高品質に昇華させて。


「凄い、まるで金属ですね……貴重だといいなぁ」


 ルーファウスが手に持つそれを見ながら言う中で、俺は自分の能力の事を考えていた。

 最近、というか……天上人に【超越ちょうえつ】してからかな、【強奪ごうだつ】にも、別の用途がある気がしてきてるんだよな。

 魔物の素材が落ちるとか、品質が良くなるとか、なんだか名前と違う気がしないか?


「金属っぽいなら、ちょっと使い道があるかも知れないな」


「使い道、ですか?」


「ああ、武器に加工とかさ」


「なるほど!」


 【強奪ごうだつ】という名前を考えるに、強引に奪う・・・・・……だろう?

 落とすと増やすでは、全然違う気がするんだよ……なぁウィズ?


『……』


 はい無視。もういいよ、慣れたから。


「――よし、それじゃあ拠点……つーか木造一軒家に戻るか!」


「はい、そうですね」


 考えても、今は試す事も出来んからな。

 先ずはこの不調の身体を治す事だ。

 ミーティアとジルさんも待ってる……帰ろう。


 と、俺とルーファウスが戻ろうとした時だった。


「「――!!」」


 二人で、周囲の異変を感じ取る。

 肌がぴりつく感覚……これは、誰かに見られてる?


「ミオくんっ」


「ああ……三人・・だ」


『――今、この瞬間まで反応がありませんでした。おそらく隠蔽ハイドの魔法かと。それも高難度の』


 ウィズでも感知できにくい程のハイディング!?

 それじゃあこの気配……


『はい――強者です』


 くそっ……こんな時に。

 どうする、にげるか?


「ミオくんは走って!僕が引き付けます!」


「な!それは駄目だっ!相手は三人、しかもそれなりに強いぞ!」


 刀に手をかけ、ルーファウスは目つきをするどく森を睨んだ。

 しかし、その瞬間。


「――警戒を解いてくれないかしら」


「「……」」


 その声は、凛としていた。

 女性だと一瞬で分かる声で、俺とルーファウスにそう言った。

 そして、森の陰から姿を現したのは……


「――エルフ……?」

「【セントエルフ】っ」


 【パルマファルキオナ森林国】が存在していたこの場所で、俺たちの目の前に現れたのは……銀色の、ジルさんと同じような色の髪を持った、綺麗なエルフだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る