7-42【ステラダに帰る男6】



◇ステラダに帰る男6◇


 【カリオンデルサ】を出発する前日……皇女の部屋に呼ばれたユキナリは、寝室に入って正座をしていた。いや、させられていた。

 その場には皇女セリスフィアともう一人、【女神エリアルレーネ】がいた。


『いや、なんで正座?』


 キョトンとし、二人に不思議そうな顔を向けるユキナリ。

 この国の全女の子の中で、一番の豪勢な部屋であろう皇女の寝室に座らされるユキナリは、既にしびれそうな足をモジモジさせながら聞く。


『あの~……そろそろ話をしてくんねぇ?俺も明日の準備があんだって!』


 カーテンが引かれた向こうで、そのシルエットは着替えだと分かる。

 侍女はおらず、エリアルレーネが皇女の世話をしているのだとさっせるが、終わってから呼んでくれと……抗議したいユキナリ。


『――落ち着きなさいユキ。そう言う余裕のない態度を取るから、子供っぽいと皆に言われるのですよ?』


 カーテンの向こうから聞こえてくる落ち着いた声が、ユキナリ・フドウたち帝国の転生者を転生させた張本人……【運命の女神エリアルレーネ】だ。


『そんな事言われてもさぁ……俺はあっちでの記憶がないんだぜ?転生者なのに』


『言ってしまえば、こっちで生まれたこっちの人間ですものね、ユキナリは』


 世話をされているであろう皇女もそんな事を言う。

 何をされてるんだよ、着せ替え人形ではあるまいし。と、思うも口にはしないユキナリだが、シルエットだけで見る肉の生々しさは中々にセクシャルだった。


『なぁ姫さん。国の指示を姫さんが俺に伝えて、俺はその指示通り明日には再出発しなきゃいけないんだぜ?どうしてここで正座何だって!』


 そんな中、カーテンの向こうの会話が終わる。

 『はい、おしまいです』『ありがとうございます、エリアルレーネ様』と。


 シャ――っとカーテンが戻されると、皇女セリスフィアとエリアルレーネがこちらに来る。

 『何か言う事はない?』と、セリスフィアは頬を赤めながらユキナリに問う。しかしユキナリは。


『え?……いや別に、いつもと一緒じゃ?』


『『……』』


 これは皆、ユキナリらしいと思うだろうが……本人からすれば悲しい事件だ。

 せっかく艶っぽいおめかしをして、意中の男性にサービスをしていると言うのに。


 皇女セリスフィアは、見事なまでの露出をしている。

 スケスケのネグリジェなど、国民に見せられる訳もないだろうに……それをいつもと一緒と言ってしまえるユキナリの神経に、ため息をく二人。


『はぁ~……もういいわ。話をしましょう』


『お、おう』


 あれ?と思いつつも、ユキナリは背筋を正して皇女の話を聞くことになった。

 もう足が限界に来ていたので、褒めるどころではなかった。

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