7-40【ステラダに帰る男4】



◇ステラダに帰る男4◇


「ふっ……!!」


 シャキン――と、構える青い刀身の剣はうっすらと光を放つ。

 その光は魔物には毒となる、星光ほしびかりだ。


 聖剣【アロンダイト】――星の欠片で打たれた刀身は、淡いかがやきを放つ。またの名を――星剣【アロンダイト】だ。

 星の光は軌跡を描き、その軌跡は魔法発動の紋章となる。


 地球で伝えられるような神話とは違い、魔法と言うファンタジーが込められた逸品であり、剣を振るう度に魔法を発動できると言う特徴を持つ。


「――覚悟っ」


 ライネは長い前髪に隠れた眼光をするどく細めると、一歩を踏み出した。

 瞬歩動と呼ばれる、【サディオーラス帝国】柔術の移動法で魔物の懐に入り込み、胴を狙い一閃する。


 キュラァァ!!


 鳥獣型の魔物は大きく長いくちばしを開き、素早く剣を防ごうと動いたが。


「遅いっ!!」


 ライネは身体を逸らせ、胴斬りから一瞬で狙いを変えてくちばしを捉えた。

 本来の剣ならば、硬いくちばしは剣を防ぐだろう。

 しかし、この剣は転生の特典ギフトだ……それもチート級の、当たり武器だ。


 音もなく……その一閃は魔物のくちばしを分断した。


 ストン――と、別たれた先端が地面に突き刺さると、魔物は自分が斬られた事に気付く。


 キュラ!?――ギュラァァァ!!


 大きく身体を後退させ、魔物は半分以下になったくちばしで声を上げた。

 上下に開くくちばしからは、収納されていた舌がベロンと垂れだし、それと同時に大量のよだれが溢れた。


「きったなっ……!!」


 ライネはぴょんと跳ねて避ける。

 顔は青く、ドン引きである。


 キュラァ……!


「勢い無くなったわね、ボケナスへの怒りはどうしたの?」


 緑色の髪の隙間から見える目は、何故かうるんでいた。

 グシグシと、ライネは剣を持たない反対の手で涙を拭った。


「……うう、副作用が――っと!!」


 跳躍。

 ライネの足元を、翼が打った。


「【アロンダイト】!!星のしるべを!」


 剣を振るう。

 空振りに取れるその動作も、【アロンダイト】では話が違う。

 青い軌跡は一瞬で紋章を書き、ランダムで魔法を発動させる。


「――【雷撃の槍《サンダースピア》】!」


 ライネの目の前に書かれた紋章は、雷の魔法を発動させた。

 【アロンダイト】で発動される魔法はライネが使用出来るものに限られるが、魔力を極端に節約できると言う特徴がある。


 紋章は二メートルもの範囲。

 その範囲から無数に雷の槍が出現し……魔物に向かって。


「行けっ!!」


 突撃した。


 ギュラアアアアアアッ!!


 飛翔し逃げようとしたのか、しかし先程までの飛行で余力が無かったのか、魔物は飛ぶ事無く雷の槍を受けた。


 ギュラッ――!!


 バリバリバリバリバリ!!と、感電する魔物。

 威力は中程度だが、その数は尋常ではない……プスプスと煙を出す魔物に対してライネは、既に動き出して行動を移していた。


「はっ……!!」


 跳躍一撃。

 飛び跳ねた勢いで、上段から叩き斬る。


 パシュゥゥゥゥン――……


 頭部から下半身を両断され、魔物は声もなく……【魔力溜まりゾーン】に還っていった。

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