7-35【ジェイルの借りの返しかた3】
◇ジェイルの借りの返しかた3◇
全てを失ったジェイル。
どれだけの時間を放浪したのか、それは分からないけれど、死をも考えた彼が今もこうして生きているのは、その
「
同族に殺されると言う終わりも出来たはず……それをしなかったのは、何故だろう。
「追って来たのは、ジルだった……当時はまだ、冒険者だったな」
「え」
ジルが……ジェイルを殺そうと?
確かにジルは、ジェイルに当たりがキツイ時があった。
何かしら理由があると言うのも、ミオの話で聞いたけど……
「父である国王が死に、俺の母も死んだ……生き残ったのはジルの母、現女王だ。
「イリアの事……ハーフだって気付いてたの?」
しれっと見てたのね。
「種が危ういエルフだ。それでなくても少なくなってしまった人口を、ハーフは更に
「じゃあ、ハッキリ聞くけど……ジェイルは?」
どう思っているの?ハーフ――イリアの事。
「……俺はどう思う事もしないさ。そんな浅はかな考えは出来ん……してはいけないだろう、国を滅ぼす原因を作った俺が、種をどうこうは言えんさ。そんな立場ではない。それに……愛は種族に関係ない」
「へぇ……」
(凄く意外な答えだわ……愛とか言うなんて)
でも……少なくとも今は、良くも悪くも思おうとはしていないって事かしら。
それならそれでやりやすいわね。下手にイリアを
「話を戻す。俺は
「コメット……って、まさか」
ピンとくる。
「その通りだ……コメットは、ダンドルフの母親だ。ミーティアお嬢様の祖母に当たる」
「その人との出会いが、今ジェイルが【クロスヴァーデン商会】にいる……理由?」
「――そうだ。救われたんだ……俺はコメットに、あの子に」
彼が物憂げな理由……分かってしまった。
そしてそれと同時に、先程の「愛」と言う言葉、エルフと人間の決定的な
「……好き、だったの?その人の事……」
「……ふっ……そうだな。きっとそうなんだろう……だから、俺はダンドルフの
ジェイルは、ダンドルフ会長に借りを返している。
その借りは、きっと五十年以上前……ダンドルフ会長が産まれる前からあった借り。
ミーティアの祖母に当たる少女に救われた……一つの愛の形だ。
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