7-31【休む間もなく3】+用語15



◇休む間もなく3◇


 少し落ち着いたわ。これがジェイルのおかげと言うのがしゃくに障りそうだけれど、真っ先に戦闘にならなかっただけマシかもしれないわね。


「――で、貴方あなたは何をしにウチに?」


「おかしな事を聞くな。俺は仕事をしに来ただけだぞ……」


 れられたお茶は、緑茶によく似た温かい物だった。

 正直言って、紅茶とかよりも舌に合う気がするわ。落ち着くし。


 そのお茶を飲みながら、私とジェイルは対面で話を始めていた。

 今私が座っていた場所に、先程まで座っていたパパは気を利かせてくれて、ママと一緒に部屋に行った。

 まだ全然話せてないのになぁ……と、なんだか可愛い事を言って。


「仕事?【クロスヴァーデン商会】の……ってこと?」


「……ああ、まさしくそうだ。契約の延長を申しださせてもらった」


 予想外だった。

 村の一番の資金源である【スクルーズロクッサ農園】の契約を切られる事は、私もミオも覚悟をしていた。

 影響は村全体に広がるかもしれないから、転生者の知恵を使ってでも何とかする……二人でそう決めてはいたけれど。


「延長って……解除ではなく?」


「どうしてだ?」


 質問に質問しないでよ。

 でも、ジェイルはまさか……詳しくを知らない?


「どうしてって、三ヶ月前にあれだけの事があって……私たちは【ステラダ】に居られない。学校も【ギルド】も閉鎖されてる、ミーティアだって……ミーティアだって!危険だったわ……」


 思わずヒートアップしてしまい、私は自分を落ち着かせるようにお茶を一気にあおった。

 そして続けて、嫌味のように。


「……あの時ミオがいなければ、ミーティアは死んでいたわ。父親……ダンドルフ・クロスヴァーデン会長の思惑とは違う、最悪な形でね」


「……」


 ジェイルは腕を組み、目を瞑って私の話を聞いている。

 眉間のしわは、いったい何を考えているのか。


 そして少しの静寂せいじゃくの後、ジェイルは口を開く。


「ダンドルフは、王国の大臣となった」


「それは知ってるわ。御触おふれが出ていたもの……そしてジルが所属していた【リューズ騎士団】を買収して自分の手駒にした、そうでしょ?資金源である自分の【クロスヴァーデン商会】に加えて、私兵に出来る【リューズ騎士団】までを手に入れた……違う?」


 言葉的には、【クロスヴァーデン商会】である貴方ジェイルもそうなのでしょう……と、聞いているようなものだ。


「……違う、とは言い切れんな」


「言い切れない?断言じゃないって事?」


 その言葉の意味は?私は真意を問おうとして口を開きかけた。


「……じゃあ」


 と、その時だった。

 玄関口から、元気のいい「たっだいま~」という声が聞こえたのは。




 ――――――――――――――――――――――――――――――

・【澪から始まる】用語その15

 【貫線光レイ】。クラウが使う魔法の種類。

 光の剣である【クラウソラス】から放たれる、光子力の魔力攻撃。

 転生の特典ギフトである【クラウソラス】の派生魔法の一種であり、【クラウソラス】を展開していなくても、手から発生可能。魔法ではあるが詠唱はない。

 その光子は白光であり、非常に繊細な光で、屈折率や集束率によっては曲がったりもする。弱威力の魔法攻撃な為、【魔障壁マ・プロテク】のような点の防御に弱い。

 現在の種類は、【貫線光レイ】【孔雀貫線光ピーコックレイ】【光翼貫線光フェザー・レイ】。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る