7-28【一年振りの帰郷4】



◇一年振りの帰郷4◇


 その軽装は、一年前とは違い豪勢だった。

 なめし革と木で作った軽鎧や盾ではない、金属の胸当てと小さな盾。

 フルフェイスではないものの、しっかりと頭部を守れる兜。


「すみません」


 イリアが声を掛けたが、兵士は怪訝けげんな顔を見せた。


「うん……?誰かな、君たち」


 当然ね。無断で村に入っているのは確かだし。

 なら、ここは私が。


「私はクラウ・スクルーズって言います……この村の村長、ルドルフ・スクルーズの娘ですが。外国に学びに出ていて、今戻りました……物的証拠はないですけど」


 自己紹介とパパの名前を出して、居なかった理由も述べた。

 怪しまれない様に、自分から証拠も無いと告げる。


「村長の……娘さん、ですか?」


 ちらり……


 おいこらどこ見た?女は一瞬でどこを見られたか気付ける能力があるのよ?

 今胸を見たわよね?見たでしょ?ああ?


「ク、クラウ……」


 私の腕をつかむイリアが焦っている。

 平気よ……怒りはしないから。まだ、ね。


「あ……そう言えば同僚から、村長の家では一番の末っ子が小さい子って聞いたな。でも、こんなに小さかったかなぁ?」


 ピキピキ……


「……それは末の妹、コハクですね……わ、私は次女です」


 ヒクヒクと口角をヒクつかせて、私はこらえる。

 内心爆発しかけたけど、情報を整理しないと。


「次女?……末っ子ではなく?」


 イラッ……


 なんで確認するのよ。今、私言ったわよね?

 しつこいわねこの人。


「はい、次女です。長女レイン、次女クラウ……末妹コハクなので」


「あ~、他の・・皆さんスタイルいいですからね……夫人が長女さんみたいで、レインさんが次女とか言われてますからね……あっはっは!」


(コイツ……マジで斬るわよっ!)


「で、では!クラウが村長の娘さんだという事の確認も出来たという事で、何があったか聞かせて頂けますかぁ!?」


 私を押さえつけるイリアが、もう兵士に余計な事を言わせないようにか、話題替えがごとく言葉をはっした。


「ああそうだね。実は……村の防護壁を超えて魔物が侵入してきてね。それで俺たちが戦っていたんだけど、数人怪我しちゃってね」


「あちらですよね……」


「そう。重傷ではないから、治療もゆっくりでいいはずなんだけど……子供が巻き込まれてね。そのせいで、ああやって囲んで見せないようにしてるんだよ」


 怪我が重くないようでよかったけど、子供が巻き込まれたのね……村の人口が少なかった時は聞かない話だわ。

 そもそも子供が外に出る事の方が少なかったから。しかも魔物が侵入する事も、アイズの結界があったからなかったし。


「君たちは、村長宅に行くのかい?」


「ええ、そのつもりです……パ――父にも挨拶をしないと」


 東門からは近い村長宅……つまりは実家。

 東門近くでこの騒ぎが起きていても、村長は出てこないのね。


「実はさっきも呼びに行こうとしたんだけど、昨日からお客人がいるのを思い出してね……【ステラダ】からのお客なんだけど」


「「――!!」」


 さ、先に言いなさいよ!【ステラダ】からの客人……村長であるパパに会おうとする人物なんて、限られる。

 嫌な予感を孕みながらも、私とイリアは急ぎ向かう事にするのだった。

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