7-27【一年振りの帰郷3】



◇一年振りの帰郷3◇


 様変わりは喜ばしい事、それは言わずもがな理解できる。

 でも……寂しい気持ちが私の中に残っているとは思わなかった。


 それがいい方向かどうか、確かめるのはこれから。

 村がどういう風に変わったのか、ミオが一度帰ってからまた時間が経っている。

 聞いた時点から情勢も変わりつつあるのだから、更に変わっている可能性は充分にあると思うのよね。


「さて、門番……って、いないじゃない!」


 ミオは、ガルスくんが門番をしていたって言ってたけど。

 そもそも誰もいないんだけど。


「不用心ですね」


「ホントそれね……まったく」


 呆れを通り越して恥ずかしくなってきたわ。

 イリアに不用心って思われて、恥ずかしい。


「仕方ない。入りましょう……別に構わないでしょ」


「はぁ……いいんでしょうか」


「いいのよ。私の村だものっ」


 私は恥ずかしい思いを隠すように、ズカズカと大股で進んでいく。

 後でガルスを見つけたら、動けなくなるまで訓練してやるんだから。





 言わなかったけど、よくよく考えたらミオが入ったのは北の門だった筈。

 私とイリアが来たのは東門だから、ガルスがいない可能性はあったんだわ。


 それでも、誰もいなかった事は確かな門をくぐり、中へ入ると。


「全っ然違うんだけど……建物めちゃくちゃ増えてる!それに人が多いっ!」


 大凡おおよそ自分の村とは思えない発言だ。

 これが十年とかならまだ分かるけど、まだ一年よ?

 たった一年で……普通ここまで進歩する?


「もっと小さな村を想像してましたけど……言われていたものと、だいぶイメージが違いました」


 イリアがおどろいている。

 いや、私もなんだけど。


「……ん?あれは」


 イリアの言葉と同時に、村の通りに人だかりを見つけた。

 ざわついている?……何かあったのかしら。


「行きましょう」


「……はいっ」


 深刻そうな雰囲気をイリアも感じたのか、私たちはその人だかりへ向けて駆け出した。




「何かあったんですか?」


 私は人だかりの端っこ、一人の男性に声を掛けた。

 知らない人だったから、多分ミオが言ってた移住者ね。

 本当に前よりも移住者が多いんだわ……


「ん?ああ……魔物だよ」


「――魔物!?」


「……どこにっ」


 私は声を上げ、イリアは周囲を警戒した。


「ああいや、魔物は自警団の方が退治したよ……でも、その男の子が怪我しちゃったみたいでさ。子供たちにその様子を見えない様に、こうやって囲ってるのさ」


「……怪我?大きなですか……?」


「う~ん……どうだろう」


 少し前の私なら、治療は軽々できた。

 でも今は……魔力が安定しない。

 ミオの能力――【叡智えいち】が言うには、【魔力超過使用オーバードマジック】と言う現象なんだとか。


 ミーティアの致命傷を癒すため、元々の存在魔力を大幅に超える魔力量の魔力を使用して、【治癒光ヒール】をかけまくった弊害へいがい

 そのせいで、今の私は極端に最大魔力が低下しているんだってさ。


「クラウ、あちらに軽装をした兵士さんがいますよ……行ってみませんか?」


「ん……ええ。ありがとうございます」


 イリアに返事をして、男性にも礼を言って。

 私とイリアは軽装の兵士……おそらく自警団の人のもとへ向かう事にした。

 

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