7-26【一年振りの帰郷2】



◇一年振りの帰郷2◇


 道すがらイリアと話しながら西に進んでいた私たちは、何度かの戦闘を挟んで順調に進んでいた。

 ここは【テスラアルモニア公国】の領土だけれど、もう直ぐで【サディオーラス帝国】との国境付近……つまりは【豊穣の村アイズレーン】に着く。

 国境を越えて西に少し進めば、あっと言う間。

 北に進めば【リードンセルク王国】に行けるし、何かと便利な位置にあるわよね。


 周囲を警戒しながら、私は声を掛ける。

 丁度、イリアの戦闘が終わったところだと思うから。


「そろそろね。魔物は?」


「――はいっ!倒しましたぁ!!」


 振り向くイリアは、魔物の血で濡れていた。

 いや怖いから。


「……はいはい、ごくろうさま」


 笑顔で振り向くイリアは、短剣を両手に興奮状態。

 出現した魔物は強い物ではなく、よくいる魔物たちだった。


 そんなイリアの顔を拭いてあげながら、少しだけ呆れて言う。


「平気?疲れてない?」


「はいっ。この剣とガントレットのおかげで、魔力が極端に上昇してくれていますし、クラウやジルさんのおかげで実力も付いている気がします!」


「そ」


 今こうしてイリアが戦っているのは本人から言い出した事で、「強くなりたいので私が戦います!」と意気揚々いきようようで魔物たちと戦闘をしてくれたわ。

 おかげで私は楽を出来たもの。控えめに言っても助かってるわ。


「もう少しねぎらいが欲しいです……」


 そんな事を言うイリア。


「充分してるから。ほら、行くわよ?」


 まったく……半端者ハーフとしてさげすまれて過ごしてきた反動からか、イリアはちょくちょく褒められたがる。

 三ヶ月の初めは私もミオもジルもミーティアも、全力で褒めちぎっていたけれど、最近ちょっと調子に乗っている気がする……だからみんなで相談して、あまり褒めないことにしたわ。


 調子に乗って怪我をされても困るし、戦力にしているんだからこそ成長も期待してる。


「……はぃ」


 シュンッとして肩を落として、トボトボと私の後ろを付いてくる。

 戦えるようになった事を喜ぶくらいは、可愛いのだけれどね。




 程なくして、そろそろ日が沈み始める頃。

 森を進んだ私たちに、大きな壁が見えた。


「えぇ……」


「どうしました?」


 見える筈だったのは、村を害獣から守るための防護柵。

 それが無くなり、身の丈を容易に超える壁が……あったのだ。

 しかもきちんとした、他の町にもありそうなくらい丈夫な物が。


「いえ……一年で変わるものだと思ってね」


「そうなんですか?私は他の村とかをあまり訪問した事が無いので……」


 本職はメイドさんだったんだものね。


「なら、これから沢山回ればいいわ……さぁ、行きましょうイリア」


「――はいっ」


 私は一年振りに帰って来た。

 村が大きくなり、人が増え、様変わりを続けていることを知る。

 変わってしまった田舎に帰って来た人の感情、よく分かったわ。

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