7-25【一年振りの帰郷1】



◇一年振りの帰郷1◇


 数回の大きな音と、一瞬だけ爆発した大きな魔力。

 目を細めてその方角を見つめる私……クラウは憎々しい思いを込めて言う。


「ミオの奴ぅ……」


「や、やっぱりミオが……戻りますか?」


 隣のハーフエルフ、イリアが言うが、今から戻っても間に合わないわね。

 だからここは、ミーティアとジルに任せるしかない。

 近くの湖でミーティアのリハビリをするのだろうし、距離的にも遠くはないから。


 私はため息をついて、イリアに答える。


「はぁ……いいえ、そのまま進むわ。夕方には着かないと、村にも検問が出来てるらしいし……入れなかったら野宿よ、いいの?」


「え……それは嫌ですけど、クラウは村長の娘さんですよね?」


 だから入れるんじゃないかって?

 考え甘くない?まぁ気持ちは分かるけど。


「言っておくけど、私は一年振りなのよ。村に帰るの……検問がどうとかって情報だってミオに聞いた事で、自分で確かめてはいないのよ。ミオの幼馴染が門番をしていたって言うから、融通ゆうずうは利かせて貰えるだろうけど……期待はしないで」


「……」


 歩きながら、イリアはちょくちょく私の様子をうかがって来ている。

 機嫌を探るような感じで、慎重に。


 その視線に耐えられず、私はジト目で。


「なによ?」


「いえ、その……怒ってます?」


 ピタリと、私は足を止めた。

 イリアも同じく止まるが……以前のようにおどおどしなくなったわね。


「怒ってるわね。どこかの馬鹿な弟に」


「で、ですよね……納得いきました」


 ミオはきっと、言う事を聞かずに無理をするだろう。

 今日の皆の行動は、以前から決めていた予定だったから変える事はしなかったけど、一人になったミオの事だ……絶対に何かしてる。


 能力を使った何かか……もしくは戦闘とか……


「さっきの魔力の波動……戦いだと思う?一瞬だけだったけど」


「……どうでしょうか。魔物が暴れれば、森の動物も騒ぐと思いますし……」


「そうね。静かだった」


「はい。ですので……ミオが無理して戦ったとしても、もう片が付いているのではありませんか?怪我をしているとはいえ、ミオはお強いですし」


 もしくはジルが寸前で助けた……とかね。

 ミオの事だから、逃げ回るって事はしないだろうし。

 むしろいさんで戦いに行くでしょうね……だから腹立たしいのよ。動くなって言ってるのに。


「無事だとは思うけれど……はぁ、私もミーティアのようにウィズって能力の声が聞きたいわ」


 能力――【叡智えいち】。

 ミオが使う、完全自立型の意志を持った能力。

 三ヶ月前にミオが私たちの前で会話をし出して、その後に詳細を聞いたわ。


「あ~……確かにうらやましいです。連絡が取りあえて……」


「……そうね」


 頭を抱えたくなる思いと共に、私とイリアは【豊穣の村アイズレーン】へ向かう。

 もうすぐ、一年振りの帰郷だ……村がどう変わったのか。この三ヶ月で王国からの被害が無かったのか……調べないと。

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