7-23【男の仲間、欲しくない?3】



◇男の仲間、欲しくない?3◇


 俺の人生で、もっとも縁遠かった存在。

 それが男友達……仲間だ。


「契約がどうとかは、実は口実でさ」


「え」


 その言葉にジルさんは「おい」とジト目を向けるが、俺は続けて言う。

 意外そうにおどろくルーファウスに。


「俺を助けてくれただろ?」


「……はい?」


 それだけ?って顔をするルーファウス。


「放っておく事だって出来たはずだろ?もしくは様子を見る事だって出来た。だって、あの場で俺は戦ってたんだしさ」


「……それは」


 そう。あの場で俺を助ける理由は無いんだ。

 自分が逃がした魔物だろうが、それを俺たちは知らないんだから。

 それを、場所が故郷だからって追って来て、あまつさえ戦闘中に割って入って、一言目が「すみません」だからな。


「ルーファウスが強いのは、なにもその刀があるからだけじゃない……それは、あの剣技を見れば分かるよ。修練を積んだ、良い一撃だったもん」


 負けそうになってた奴が何を言う……そう言われたらそれまでだが、ルーファウスがそんな事を言わないって、この短い時間でももう理解した。


 こいつは――いい奴だ。


「今。俺は見ての通り怪我をしてる……これが、ルーファウスと契約したいって言ってる最大の理由な。少しでも戦力が欲しいんだよ」


 血がにじみ始めた包帯が巻かれた両腕を見せながら。


「それじゃあ……最大じゃない理由は、なんですか?」


 そこが気になるか。

 やっぱり思った通りのやつだよ、お前は。


「……友達になりたいから、かな」


「え?と、友達……ですか?」


 声が裏返るほどおどろいたのか、ルーファウスは椅子から立ち上がっていた。


「……ぷっ……くふ……」


 おっとジルさん?肩を震えさせて笑うの止めてくれません?

 自分でもよく分かってるよ。似合わないんだろ?こんなセリフさ。


「ほ、本気で言ってるんですか?友達だなんて……さっきの契約と言われた方が、まだ納得できそうなのに……」


「ん?ああ、本気さ。友達になりたい。フィーリングって言うのかな、直感で思ったんだ。ルーファウスとなら仲良くなれるかもって。ルーファウスがどう思うかは……まだ分かんないけどね」


 ははは……っと笑いながら、俺は内心こっずかしい思いを隠しながら、痛む手を伸ばした。


「握手しようぜ、ルーファウス」


「握手……」


 差し出す俺の手をじっと見つめる。

 そのうれいを持つ眼差しと、心配になりそうなほど考え込むような真面目な所。

 言わば俺には無い一面だ……そこを、俺は好きになったのかもしれない。

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