7-20【追っていた理由2】



◇追っていた理由2◇


 ルーファウスは椅子に座り直して、先程俺が言った質問に答える。

 いいね。素直で……でも本心かはわからない、くまなく観察だ。


「僕は、色々な国を見て回っています……そこで、この剣も師匠ししょうから授かりました」


 ルーファウスは大事そうに刀を見詰める。

 刀を剣と呼ぶのは、転生者ではない証拠の一つかもな。

 まぁ間違ってはいないし。


 それにしても、その年齢で流浪るろうの旅人だったのか。すげぇな。


「生まれはこの国で、丁度帰国しまして……そこであの魔物の集団を見かけたんですよ。一体逃げてしまったのは不徳の致すところですが……ミオくんが足止めしてくれたおかげで倒す事が出来ました……改めて感謝です」


 なるほどな。それが猿の魔物たちだったのか。

 俺の苦労も無駄ではなかったという事だ……もっと言ってくれ、この人ジルさんたちに。


「この国の生まれ……【テスラアルモニア公国】か」


 そう言ったのはジルさん。

 そうか……今いるこの森は、エルフの国が在った場所だから。


「あ、すみません。無神経でした」


 ジルさんに頭を下げるルーファウスは、本気で申し訳なさそうだった。

 でも、お前がそこまでしなくても。事情だって関係ないだろ?


「いや、いいさ。君が謝罪する事ではないよ。それに、もう百年近くにもなるんだ……忘れている人間たちも大勢いる」


 ジルさんも笑って答える。

 確かに昔の事ではあるかも知れないが、故郷を追われたのは事実だ。

 だけど、一国民のルーファウスが謝る事ではない気もする。


「感謝します、ジルさん」


「ジルさんは心の広い人だからな。ルーファウスが謝る事じゃないのも事実だし、それでいいって」


「……いえでも……いや、ありがとうございます」


 何だ?もしかして思い込みが激しいのか?

 俺が気にするなって言うのも変だから、追及はしないけどさ。


「それで、ルーファウスはこれからどうするんだ?」


「生まれ故郷に帰ろうかと思ってはいますが……少し魔物の討伐をしておきたいですね。どうやら北の国では【ギルド】が動けなくなっているらしいので……魔物の数が増え始めているんですよ」


 それはその通りだ。

 【ギルド】は動けない……と言うか稼働すらしていない筈だ。

 他の生徒……同窓生や先輩たちも気にはなるけど、あの日に知人たちに被害がない事だけは確認しているし、あの日以来大きな徴兵ちょうへいは無いと聞く。

 だから静観して、今は身体と魔力を回復させてるんだよ。


「魔物退治か……なぁルーファウス」


「はい、なんですか?」


 これは俺の為、そして魔物を倒したいと言うルーファウスの考えとも合致する。

 だから言う。俺は、ルーファウスを――仲間にする。

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