7-19【追っていた理由1】



◇追っていた理由1◇


 ルーファウス・オル・コルセスカ。

 突然知り合ったこの少年……俺よりも背が低く、顔もめちゃくちゃ童顔な年上の剣士。

 転生者の証である転生の特典ギフトを持つ、この世界の純粋な住人だ。

 どんな理由にしても、その刀――【天叢雲剣あめのむらくものつるぎ】がチート能力であることに間違いはなく、それだけでもとても貴重な存在だと分かる。

 だからこそ余計に、傍に置いておかないと危険な気もする……んだけど。


「ジルさんは、【セントエルフ】ですよね?……以前はこの森に?」


「ん?ああ……はははっ、久しぶりに聞いたな。普段はもうどこでも……エルフで統一されているからな。珍しいぞ」


「あはは……はい、少し勉強をしまして」


 ルーファウスとジルさんは、何故かとても会話をはずませていた。

 エルフ族の正式名称、【セントエルフ】と【ダークエルフ】……それを知っていて、更には敬意を持って会話している感じだ。


「なぁルーファウス、お前って貴族か?」


 どことなく気品と言うか、上品さを感じるんだよ。

 王族なんか知らない……いや、ジルさん王女だしジェイルは王子なんだった。


「え?いえ……違いますよ。どうしてですか?」


 背筋の良いまま、ルーファウスは軽く首を横に振る。


「そっか。ああいや……なんだか立ち振る舞いとか、それっぽいなぁってさ」


 あれ、なんかジルさんに睨まれてる。なんでだ。


『……「わたしはそんなに王女らしくないか?」……と言いたいのかと』


「――ぷふっ!」


 声音こわねを真似たウィズの声に噴き出したのはミーティア。

 聞こえたのね。それにしてもジルさん……そこまでは言ってないし、頼りにしてるから。

 だけど、まぁ王女らしいところはほぼ見て無いし、自分でも気にしているとは思えないんだが。


「平気ですか?ミーティアさん……」


 プルプル震えるミーティアに声を掛けるルーファウス。

 優しいね、君は。


「……ところでルーファウスはさ、どうしてあの魔物……あー亜獣か。奴を追ってたんだ?しかも一人だし……こんな森の中でさ?」


「……ああ、それですか」


 ミーティアは片手で口元、片手でルーファウスに大丈夫と伝えて、「ごゆっくり」と言って部屋に行った……もしかしたら限界だったのかも。

 話は俺とジルさんで聞くとして……あ、ウィズがミーティアに教えてくれてもいいぞ?


『――そうします』


 さて、本題だ。

 ルーファウスが猿の魔物と戦っていた、それが一体逃げて【魔力溜まりゾーン】を吸収して亜獣になった。

 ではなぜ、ルーファウスはこんな森の中で一人……魔物と戦っていたんだ。

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