7-17【後悔は遅い1】



◇後悔は遅い1◇


 新しく出会った少年。

 ルーファウス・オル・コルセスカ……彼に礼をする為、俺はちょっとした興奮を覚えながら木造一軒家へと歩く。


 何を興奮してるかって?

 そんなもの、男が来てくれてに決まってんだろ……生まれてから、ずっと女系に囲まれてきた異世界生活、ようやくまともな男性と出会ったんだからな。

 幼馴染のガルスはともかく、貴族のロッド・クレザース先輩や転生者ユキナリの奴は、くせがありすぎるだろ。


『――まだ、この少年が無害かは判断できにくいですが』


 それはそうかもしれんけど。

 それでも、この純粋無垢そうなショタ……じゃない、幼い見た目の年上が、悪い奴とは思えないんだよ。

 だから警戒はしても、もう少しこの少年を知りたいんだ。


「……着いた。ここだよ」


「こ、こんな所に家が……しかもすっごく立派じゃないですか!?」


 二階部分を見上げて、ルーファウスは「うわぁ」と目をかがやかせておどろく。

 いや、だからそのリアクションがマジで少年のそれ。


「ははは、そうおどろくなって。中身は全然整えて無いし、汚いくらいだからさ」


 そう言いながら、俺は悪くない気分で扉を開ける。

 キィ……と、油を指していない引き戸が音を鳴らした瞬間、ウィズが。


『――中に生体反応。二人です』


 この状況、居るならミーティアとジルさんだろ。

 それくらい分かってたって。わざわざ言わなくてもいいだろ?


『……この家の改築を知られたという事ですが』


「あ」


 そうだった。

 少し無理して【無限むげん】を使って、しかもデカい音を鳴らした魔物と戦って、更に来客者付きだった。


「「……」」


 扉を開けると、それはもうご立腹の二人がいた。

 俺を見るその視線が、もう痛いです……


「えっ……と、ミオくん?どうしたんです?」


 俺の背中に視線を向けるルーファウス。

 背が低いから見えないんだな。この二人の形相が。


「……ミオ。これはどういう事?なぁに、この家……力を使ったんでしょ?」


 手を広げて、家の事を言うミーティア。

 でもってジルさんが更に。


「魔力の反応があった。でも途切れた……魔物のな。戦ったな?どうしてわたしが来るまで待たなかった」


 二人に左右から言われる俺。

 ヤバい。分かってはいたけど汗が出てきた。

 男の知り合いが出来て、ちょっと心にゆとりが出たせいか。


「えっと……その、ほら……調子が良かったから」


「――クラウには何もするなって言われたわよね?」


「わたしたちが言っても無駄だと言うのですかね、お嬢様。悲しい事です」


「そうね。とっても悲しいわ……」


 視線が痛いって。

 あと両側からはさんで言うの止めてくれ!どっちも向けない!


「ぐぅ……」


 この二人、完全に結託してやがる。

 俺を言いくるめるために。

 だからもう降参するしかなかった……反省はしている。


「……すみませんでした」


 がっくりと肩を落として、俺は折角知り合ったばかりの少年に、いきなりカッコの悪い所を見せるのだった。

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