7-14【まるでニューゲーム4】



◇まるでニューゲーム4◇


「へっ……ざまぁみろ!クソ猿っ!!」


 立ち上がった俺は、何も持っていない左手の親指を下に向ける。

 いてえだろ、俺もいてえよ……吹き飛ばしやがって。


『殴られる瞬間に剣で防いだのですね』


「ああ。あの猿は剣を殴ったんだよ、俺は拳圧で吹き飛ばされただけだ」


 そういう事だ。

 あのクソ猿は、あの一瞬で俺を殴り飛ばしたつもりで、【ブロードソード】の刀身を殴っていたんだ。レベル99の切れ味と自分の拳の威力で綺麗に斬られて、今の今まで痛みに気付かなかったと言う訳だ。

 しかし、これが【カラドボルグ】だったらもっと簡単だったと理解できてしまう。

 それほどまでに、チート能力と普通の能力の違いが如実にょじつに表れる。


「いてて……ウィズ、そろそろ腕がヤバい。早く決めないと」


『残り時間は……一分が限界です』


 戦ってた時間は二分弱。

 そうですか、今の俺は光の国の超人ですか。


 ウボオォォォォォッ!!


「お猿もキレかかってるな。痛いなら、さっさと【魔力溜まりゾーン】に帰れ!」


 猿の亜獣は腕にめり込む【ブロードソード】を抜き取り、叩きつける。

 怒ってる怒ってる。痛いよね、はいはい。


「――ケリをつけるっ」


 剣を拾いに俺は駆け出す。

 しかし、俺の挙動を見た猿野郎は、叩きつけた剣を……踏んだ。


「なっ……こいつ、俺が拾うと」


 気付いたのかよ、しかも……動く気配がない。

 じりじりと詰め寄ろうとするが、反対の腕を振り回して俺を近づけまいと牽制しやがる。


「くっ……どうす――」


 ザンッッ……!!


 ウ……ホッ……ウボ……ゴボッ……


「……は?」


 なんだ!?

 今の音……それに、猿野郎が苦しみ出して……


 ウバ……


「……動きが止まった?……それに、魔力の流れが……なんで」


 これはあれだ……魔物が死ぬ直前の、魔力の破裂。

 この猿、なんで突然。


『――反応あり!?そんな……急にっ』


 反応。それは、きっとこの猿を追っていた奴だ。


 そして最後に、猿の亜獣は息を止めた。

 さっきの音がなんだったのか、それを証明しながら。


 ズズズ……と、頭頂部から縦にズレていく。

 軌跡は真っ直ぐに入り、下半身まで到達すると……左右に分かれて。

 さっきの音は、この猿が斬られた音だったんだ。


 分断された猿は、ドン、ドン……と、両側に倒れた。

 そしてその隙間には、全く感じなかった人の気配、そして影が。


「……誰だ」


「……」


 なんだ、この感じ。

 異様に感じる魔力の波動、ウィズが近くまで反応できなかった隠密性。

 転生者……でも無い様な、だけど……違和感のようなものを感じさせる。

 そんな猿の亜獣の追跡者が、俺の目の前に現れた。

 

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