7-13【まるでニューゲーム3】



◇まるでニューゲーム3◇


 木の枝にぶつかって落下して……膝を着きました。

 くっそ……天上人のジャンプ力が高すぎて、調節出来なかった。

 いきおいがあり過ぎたんだ。

 体内魔力が不調なだけで、ここまで動きにくくなるのかよっ!


『――ダブルスレッジハンマー来ます!』


 なにそれ!ってそうか、さっきの両手を組んで叩く奴か!


「ならカウンターでっ……」


 ウボオオオオオオ!!


 歯を食いしばり、俺をぺしゃんこにしようと攻撃してくる猿の亜獣。


 ここだ!


 迫りくる巨大な両手が俺に届く瞬間、俺は前転した。

 腕が使えないので、肩からグルンと回転して。

 そして起きざまに剣を振るう。


「――らぁっ!」


 ザッ――!と、胴斬り。

 しかし、思ったよりも……深くいかない。


ってぇ!」


 天上人の力とレベル99の【ブロードソード】でも、亜獣には深いダメージが与えられないのかよっ!

 俺は斬って直ぐにジャンプして距離を取る。今度はちゃんと周りを見て。


 ウホッ!ウホホッ!!


 猿の亜獣は傷口を指で掻き、効いていないとドラミングであおって来る。

 は、腹の立つ……!


 しかしだな……俺も、つ、疲れた。


「こんにゃろ……」


 何だか、今初めて異世界転生のスタートをしている気分だ。

 猿の亜獣は岩をつかみ、思い切り持ち上げて。


「投げるってんだろっ!」


 動いてかく乱を……と、思ったが。

 ビキリ……と、足が鳴いた。


「――いっ……てぇ!」


 つ……つったぁぁぁぁぁ!!


『――申し訳ありません!魔力の循環じゅんかんがっ』


 身体を流れる魔力って、そこまでのものなのかよ!

 冒険者たちが魔力ありきで戦うのは分かるけど、魔力を持たない一般人たちはどうやって身体を動かしてんだよ!!


『来るわよミオっ!』


 もう来てるんだよ!


「はぁぁっ!!」


 足がつって避けられないなら、迫る大岩を斬り伏せるしかない!

 両断して、そのまま反撃を!


 投げつけられた大岩を、俺は【ブロードソード】で斬る。

 大木をやすやすと斬れたことは分かっているが、岩は若干怖えんだが。


 ザンッ――


「斬れた……!――なっ!?」


 大岩を斬り、別たれた岩は左右に吹っ飛ぶ。

 しかしその隙間を縫うように……大きな拳が迫った。


 魔物が……フェイクアタック??


「――やべぇ!!――が」


 ドゴン……と、記憶が飛んじまうような衝撃。

 俺は……猿野郎に殴られ、吹き飛んだ。




 ドーーーーーーーン!!


「……」


『――ミオっ!大丈夫ですかっ!』


 大丈夫な訳ないだろ……でも、反撃はしたぜ。

 見ろよ、あの猿野郎を。


 ぐぐぐ……と、起き上がる俺を見る猿野郎の顔はニヤついていた。

 気付いてないんだろ、その腕にさ。


 猿野郎の腕、俺を殴って来た右腕は……別たれていた。

 拳から肘付近まで、真っ二つに。


 ウボッ!?オ、オオオオ……オボォォォォォォォッ!!


 遅れてきた痛みに、猿野郎は雄たけびを上げて腕を押さえた。

 その腕には、俺の【ブロードソード】がめり込んでいた。

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