7-9【働けるって最高2】



◇働けるって最高2◇


 慎重に、静かに魔力を練る。

 型に流し込むように、ゆっくりと……そして。


「いくぞウィズ……【無限むげん】」

『――はい……【無限インフィニティ】』


 言葉で確実に、ウィズと一緒に【無限むげん】を発動する。

 魔力のリソースは全部ウィズに管理してもらって、俺は形状に集中だ。


「まずは形を整えよう、本当なら地下に作るのがいいんだけど……そこまでとなると多分腕が持たないだろ?」


『はい。幸い、ここ周辺には魔物も出ます……そう簡単には騎士団も寄っては来ないでしょう。それに【王立冒険者学校・クルセイダー】も、休校状態ですので』


 そういう事だ。今は誰一人、学生が活動休止中だ。

 魔物が出る事を幸いって言うのが悲しいけど、隠れられるのは事実。

 ここら辺は、ミーティアとイリアが昨年の秋に試験を受けた場所の近くで、学生も依頼で来るからな。


 だけどウィズの言う通り、あの事件から冒険者学校は休校中だ。

 個人で依頼を受けている奴らはいるだろうし、卒業間近の三年生の問題もある……そこまでを考えてやる義理は俺にはないから、こうして自分たちの事に集中できると言う訳だ。主に療養だったけどさ。


 つまり、学生は終了の可能性もあるという事だ。

 俺だけではなく、【王立冒険者学校・クルセイダー】に通う全員だけど。

 だから卒業できない三年生は可哀想だな。


「おっ……と、ブレるなぁ」


 ひりひりしてくる右腕。

 うずくって、マジでこんな感覚なんだな。


『やはり魔力の循環じゅんかんかんばしくありません……消費量が以前の数倍かかります』


 以前のってのは、俺が天上人に【超越ちょうえつ】する前か?


『――いえ。【叡智ウィズ】が発現する前です』


「うげっ……それはえぐいなぁ~――っとおお!」


 あまりのショックに乱れてしまった。

 天族の時、更には【叡智えいち】の能力が使えるようになる前って事だ。

 そこまで破壊されてんの?俺の体内構造。


「【破壊はかい】……名前は単純で分かりやすいけど、効果がヤバすぎるな。物体に使えばほぼ消滅……人体なら即死だ。当たらないで吸い込まれただけの俺で、これだもんな……」


 俺でそれなら、直接ダメージを与えた【リューズ騎士団】のあの二人は、きっと。


『ご主人様が気にする事ではありません。確かにもっと方法があったと言えば、その通りですが……ミーティア・クロスヴァーデンの状況から。あの時、最も怒りを伝えられる能力が、【破壊デストロイ】だったのでしょう』


 サンキュ、ウィズ。そう言ってもらえるだけで救われるよ。


 でも……平和な世界で生まれた俺が、人をあやめた可能性。

 それは逃げちゃ駄目な事実だ。殺されて転生した俺だからこそ、命がとうといものだと言うのは、分かり切っているんだから。


「ウィズ……今後もなるべく、なるべくでいいからさ……命を奪わない方法で、進んで行きたい……頼むな?」


『――はい。善処します』


 でも――たった一つ、言えることがある。

 もしも、自分以外の大切な人が傷つくようなら……俺はその考えを捨てられる気がする。

 守る為に、救う為に、傷付けない為には……命だって奪うさ。


 それは俺がこの異世界で決めた、覚悟の一つだ。

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