7-8【働けるって最高1】



◇働けるって最高1◇


 数日後……昼、それぞれがその日の行動を起こしている中、俺は。

 「黙って家に居なさいね」とクラウ姉さんに釘を刺されていながらも、外に出ていた。


「……今日は少し身体を動かしたいんだよな」


 外に出た言い訳ではない。本心だ。

 天上人なんて上位種に【超越ちょうえつ】しても、チート能力の弊害へいがいで行動できないなんて勿体無い。

 クラウ姉さんとイリアは、西の方……【豊穣の村アイズレーン】の方角へ偵察。

 もし【ステラダ】から何かしらの使者が来ていたら、と考えてな。

 【クロスヴァーデン商会】は未だにウチの野菜を扱っている……ちょっとした不気味さを感じるんだ。

 それに【リューズ騎士団】……あいつらがミーティアを探しているのは明白だし、関係性が知られた以上、村だっていつ襲われてもおかしくない。


『だから村に帰るのが一番よいのではと……進言しましたが』


「――う……仕方ないだろ、今の俺を見られたくないし。こんな俺を見たら、アイシアがどう思うか……それにレイン姉さんもコハクも」


 色々と世話をしてくれている女性陣の中に、更に数人増えるとなると……俺からすれば地獄だ。考えようによっては天国?……それはそうだが。


「だからせめて、ここら辺から様子を見るのがいいって相談して決めたんだろ?」


 ここは【ステラダ】と村の中間。

 どちらにも直ぐに移動できるし、元はエルフ族の領土らしいからジルさんも地理には詳しい。


「ティアとジルさんはリハビリだし、動くなって言われても多少はいいだろ?ウィズが管理してくれてんだしさ」


『それはそうですが……』


「なら行動あるのみだ、それに……動いた方が治りが早いとか言うだろ?だから働くぞっ!」


 こうして俺は一人、今まで全然まともに動けなかった分の作業を始めるのだった。





 まずは、このボロ小屋だ。

 適当にもほどがある。【無限むげん】は精細な作業だが、幅を広げたりする大雑把な工程は簡単なんだ。

 それすらもまともに発動できないとは、俺のA型の血が許さん……あ、そう言えば今世の血液型ってなんなんだろう……調べた事なかったな。


『――スクルーズ家は、もれなく全員O型です』


 へぇ……でもそうだな。母さんやレイン姉さんはO型で納得できるかも。

 でもクラウ姉さんはBだろ……あの部屋を見れば。

 思い出される、かつての姉妹部屋。クラウ姉さんの一角だけ、やけに散らかってたからな。

 ああでも、O型も大雑把なんだっけ。

 前世と今世で合わさって、更に雑になってたりして。


『前世ではB型だったのでは?ご主人様が前世でA型だったように』


 なるほどねぇ……クラウ姉さんは前世でB型……と。

 前世の俺なら、B型合わねぇ……と考えそうだけど、今は何とも思わないな。


『その寛容さがO型の特徴ですね。全てがそうとは言えませんが』


 な、なるほど……俺も今世の影響受けてんのな。

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