7-10【働けるって最高3】



◇働けるって最高3◇


 作業開始から数十分。

 ようやく整えられた小屋は……木造の建築物ではそうとう豪勢な造りになっているはずだ。しかも頑丈で、迷彩もほどこしたんだからな。


「ど、どうよ……こんなもんでっ」


 少し前の俺なら、数分も掛からずに完成させられただろう。

 それが、全力全開の【無限むげん】で数十分……ようやく一個の物を完成させた。


『お疲れ様です。他の皆さんが戻る前に……中に入りましょう。まぁ、この家を見ればバレますが』


「――うっ。でもいいだろ……ボロのプレハブ小屋から木造一軒家にチェンジだぞ!?」


 部屋だって個別で用意しているし、風呂もトイレもあるんだ。

 地下に繋げるのはしんどかったけど、それだけでも感謝して欲しい。


『皆さんは、住居よりもご主人様の身体を心配していますので』


「――うぐっ……」


 刺さる言い方をっ。

 俺だって、これ以上は女性陣に甘えられないと思ったから……だからこうして住めるくらいにはしようと思ってだなぁ。


『それだけ心配してくれているのです。自分たちの住処すみかよりも、一人の男性を優先したと言う事を、考えて上げて下さい』


「……」


 言い返す言葉も出なかった。

 動けるのは素晴らしいし、働けるって最高だ……でも、そこまで言われるとは。


 俺は肩を落としながら、家の中に入って行く。

 中身も結構綺麗にしたんだけどなぁ……テーブルとかは雑な造りのままだけど。


『――ご主人様』


「ん?どした?」


 座ろうとした俺にウィズが。


『……この反応は……魔物です』


「……マジかよ」


 誰もいないこんな時にかよ。

 音は鳴らさなかったのに……魔力でバレた?


『――いえ、これは……逃げているのでしょうか』


 逃げてる?魔物が?

 誰から?魔物と魔物は滅多に争わないし……まさか【リューズ騎士団】?


『不明です……ですがこちらに向かって来ています。数は一』


 一体か……それなら、今の俺でもなんとかなるよな?


『無理をしなければ』


 よし、なら行くぞ。

 俺もリハビリだ。ミーティアに負けてらんねぇっ。





 外に出て、俺は右腕をかばうように左手で支えながら走る。

 動くだけなら、体力で何とかなる。右腕さえ使わなければ、戦う事だって!


『武器を使うのは禁止です。特に【カラドボルグ】と【ミストルティン】は』


「はぁ!?じゃあどうしろってっ!もうここまで来ちまっただろーが!」


 左手で【カラドボルグ】ならいけるんじゃね?と考えていたのに!!


『ですのでウィズも考えました。最善は……ハズレ能力の解放です』


 ハズレ……俺の中にある数あるチート能力の中にも、そんな能力や武器が存在する。それがその時だって??


『はい……――行きます』


「……!!」


 急激に脳裏に浮かぶ、その名前。


「――【ブロードソード】!!」


 顕現けんげんしたのは、幅広の両刃の剣。

 どこからどう見ても、どこにでも売っていそうなその剣だった。


 しょ、初期装備じゃねぇぇぇぇぇかぁぁぁぁぁ!!

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