7-3【動けるって素晴らしい3】



◇動けるって素晴らしい3◇


 状態は深刻だ。

 何よりも俺の生命線である、数々のチート能力。

 【破壊はかい】の影響で魔力を練れなくなった俺は、最低限の発動すらウィズに任せないと、上手く使用が出来ないくらいまで弱っていた。

 しかもその際、ウィズは能力の維持にリソースを割くため会話が出来ないんだと。


「確かに深刻ではあるが……冒険者学校には行けないのだし、療養だと思え」


「はは……それはそうですね。あ、そう言えば……メイゼさんはどうしてます?」


「ん?あの娘か……まだ【ステラダ】に残っているよ。仕事の事は……考えさせてくれとさ」


 【ギルド】の受付嬢、メイゼ・エーヴァッツさん。

 あの日【ギルド】も【リューズ騎士団】の襲撃……という名の徴兵ちょうへいを受けた。

 【リューズ騎士団】は【ギルド】の運営も兼ねていたから、当然知っていると思ったが、実の所……【ギルド】を運営する人たちと行動を起こした人たちは、全然派閥はばつが違うという事らしい。


 つまりは謀反むほんか造反だ。


 メイゼさんは知らなかった側であり、混乱の最中ギルマスに逃げるようにうながされて、数人の職員と共に逃亡。

 その後は路頭に迷っていたらしい……だから、ジルさんに俺が頼んで、スカウトしたんだ。

 今後……近い未来、協力して欲しいと。


「そうですか……でも、よくまだ【ステラダ】にいますね。【リューズ騎士団】は王都に移動しましたけど、荒れてる……んですよね?」


「そうね。病院まで殺伐としてたから……私たちもこうして移動したんだし、狙われてるし……はぁ~」


 大きなため息だ。

 だけどその通りで、俺たちが【ステラダ】に残らない最大の理由が、ミーティアが狙われているからなんだ。

 【ギルド】が機能していない以上、【王立冒険者学校・クルセイダー】も、その活動は限られる。

 教官たちに会う機会もあったから、話は聞けたけど……それはまた今度な。


「平気かティア?病院だって、半ば無理やり退院して……こんな森の中だ。悪いな……苦労かけて」


「苦労だなんて……私はミオがいてくれれば、どんな苦境も乗り越えて見せるわっ」


 かがやく瞳で俺を見詰めるミーティア。

 ああ……こんなにも苦労をかけているのに、この子は俺といるだけでいいって。

 普通に泣きそうなんだけど。


「ゴホンッ!!」


「「あ」」


「二人の空気は二人きりの時にしてくださいね。それと……節度は守るように」


 赤面しながら目をつむり、口元に手を当てて俺とミーティアに言うジルさん。


「――ま、まだ何もっ!!キスだってまだ一回しか――あっ!」


「……くぅっ……」


 顔を伏せる俺。


「ほ~う。そうですか……へぇ、一回ねぇ?」


 椅子から立ち上がるミーティアと、俺をジト目で見るジルさん。

 ミーティアは顔が真っ赤だ。しかし気持ちは分かる……でもなジルさん、俺はまだ手は出していないからっ。誓って言うぞ、俺は誠実だからっ!!

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