7-2【動けるって素晴らしい2】



◇動けるって素晴らしい2◇


 血が滲んだ包帯を交換するために、俺とジルさんは急造した小屋へ戻る。


「おかえりなさいっ……!」


 今、心配そうに声を掛けてくれたのは……ミーティアだ。

 ひょこ――っと右足を引きずって、玄関まで歩いてくるが。


「お、お嬢様っ!まだ無理をなさらずにっ!!」


 ジルさんが駆け寄る。

 肩を抱くように支えるが、しかしミーティアは、まるで意固地の様に。


「へ、平気だってば、子供扱いしないで」


 優しく引き剝がし、俺のもとへ来る。

 ジルさんの気持ちも、ミーティアの気持ちも痛いほど分かるよ。

 一方は心配だし、一方は迷惑かけたくないんだよな。


「おかえりなさいミオ。傷は平気?」


「……ああ。ありがと、ティア」


 笑顔を見せてくれるミーティアに、俺も笑顔を見せる。

 あれから数ヶ月……俺たちは、まだまだボロボロだった。





 三人で、形の悪いテーブルに着く。

 今見ても雑な造りだな……一ヶ月前の俺よ。


「はい、どうぞー!」


 コトン……と、控えめに置かれる大皿。

 ミーティアが作った野菜の肉詰めだ。美味そう。


「お!美っ味そうーだな!」


「ふふっ、でしょ?でもミオは手を使わないでね、私が食べさせてあげるからっ」


 そう言って、ミーティアは俺の隣へ。

 ジルさんは俺の正面だ。


「いやいや、自分で……ってかジルさんもそんな視線しないでくれ!」


「いやいや、お嬢様がいいならそれでいいが……出来ればイチャイチャはわたしたちがいない時にして欲しい。目に毒だからな」


 腕組みをして、うんうんとうなずくジルさん。

 なにその後方腕組みのスタイル。


「もう!そ、そんなのじゃないってば!ミオはまだ腕の怪我があれだから……それに、クラウもイリアも順に食べさせてたでしょう!?」


 ねぇ、俺は自分で食いたいんだけどさ。


「確かに、先程包帯を替えましたが……まだ皮膚がめくれていましたね」


 考え込むジルさん。

 ならうように、俺もミーティアもだ。


 とは言っても、俺には心当たりはある。

 能力――【破壊はかい】の影響だな。


 ウィズが言うには、こうだ。

 『もしもあの攻撃に直接触れていたら、二度と回復はしません。あの時の威力の攻撃は、全力の【叡智ウィズダム】でも防げませんでしたので。絶対にやめてください』と……怒られた。


「時間が掛かるらしいです。多分……かなり?」


「ああ、ウィズさんに言われたのね?」


 ミーティアは俺と共有できている事が嬉しいのか、笑顔で言う。

 あの、えっとな?笑えないんだよ……実は。


「そうだな。状態はかなり悪いらしいよ、クラウ姉さんの魔法でも治らなかったし、自然治癒が遅くなってるんだってさ……ははっ」


 俺は両手の平を見ながら、自嘲じちょう気味に笑う。


 無くなってた爪は生えて来た。

 筋肉も元に戻って来てる……でも、皮膚はボロボロ。

 後……一番の問題なのは――


「うむ。魔力の練りが良くない……だから魔法――いや、能力だったか。その効率が悪いんだな」


「……はい」


 ジルさんの言う通りだ。

 俺は、上手く能力を発動できなくなっていた。

 ウィズのサポートがあって、やっと【無限むげん】を発動できるくらいには、ボロボロだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る