6-136【蛮行の王国17】



◇蛮行の王国17◇


 立ち上がった!?【光翼貫線光フェザー・レイ】を受けて!?

 この男は、前方にいた……後ろの騎士たちよりも多く、強い一撃を何度も受けているはずなのに……?


「……天使と言うモノは、想像以上だ。これなら戦力になるだろう……王女も文句は言わまい」


「やはり……シャーロット王女の指示なのねっ」


「え?まさか、この騒動そうどうが!?」

「王族が……こんなことを??」


 私はあの女にヒントを貰っていたから、気付く事が出来たけど。

 この国で生まれてこの国で育ったミーティアとイリアには、信じたくない真実なのかもしれない。

 幾らミオを狙った……その事実があろうとも、臣民なのだから。


 いや……だからこんな強引な。


「この騒ぎ、戦争でも起こすつもり?」


「……戦争、か。俺たちには関係ない事だ――コーサル!!そろそろ起きろ。また寝入りするつもりか?」


「は!?……貴方以外に――!」


 少し離れた所から、ゆっくりと立ち上がるチャラ男。


「やーれやれ、ザルヴィネさんも言わなければ寝たふり出来たのにさー」


「黙って働け。残っているのは俺とお前だけだぞ」


 その言葉通り、後ろに多く居た騎士たちは【光翼貫線光フェザー・レイ】を受けて倒れていた。

 だけど……このチャラ男だって幾らか直撃を、しかもさっきまともに【クラウソラス】で斬ったのに!


「……これは、少しマズい」


「クラウ、ここはやっぱり逃げて」


「――そうさはせん。【封界シェル】!!」


「なっ……その力!!」


 一瞬で周囲に広がっていく……緑色の魔力帯。

 甲羅のように丸い、ドーム状の障壁が……商店街全土を囲った。


「ほう……そうか、気付けるという事は。君も・・……転生者か」


「くっ……」


「転……生者?」


 マズい……この男、転生者だったんだ。

 一瞬だけ感じた、胸元が光るような魔力の波動……私が【クラウソラス】を使う時に似ている感覚、それが証拠しょうこ


「まさか……チャラ男も?」


 冷汗が出そうだった。いや、出ているかもしれない。


「え?なに……ザルヴィネさんもうネタバレ?早いじゃん」


 ケラケラと笑いながら、チャラ男は前に出て来る。

 こいつ……演技してたのね。


「早いも何も……能力を使っただけで気付かれたぞ」


「でしょうね!ザルヴィネさん能力名をおもクソ叫んだし!」


 二人の転生者……それもこんな広範囲に結界を張れる能力なんて。

 チャラ男の方は、どんな能力を……あぁもう!厄介な!!


「どうして転生者がこんな徴兵ちょうへいだなんてっ!分かっているの!?戦争なんて、起こして良い物じゃないわっ!!」


「ふむ……君も日本生まれか」


「いやいや、転生者は大概たいがい日本人だって女神が言ってたでしょ……」


 このっ!!ベラベラと!ミーティアとイリアに聞かれたし、私も返答しちゃったじゃない……もう、誤魔化ごまかせないわよ!

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