6-124【蛮行の王国5】



◇蛮行の王国5◇


 一般人にはどうしようもない、そんな都合。

 ましてや俺は、【サディオーラス帝国】……他国の人間だ。

 ここで正規の騎士に喧嘩を売れば、国家問題に発展してしまう恐れがある。

 それだけは回避しないと。


「だけど……こんな理不尽なやり方っ」


「……ミオ。お前、どうしてそこまで他人に思いやりを持てる?悪い言い方をすれば、あの馬車に乗せられた人たちは無関係……名前も知らない男たちだろう?」


 そんな事、関係無いんだって。


「……徴兵ちょうへいしているって事は、戦争の前準備でしょう?そんなの、やっちゃ駄目だ!例えそんな世界だからって理由を並べられても、納得は出来ないっ!」


 俺は、そんな時代を生きて来たんだ。

 争いなんてない、そんな平和な世界で。

 勿論もちろん……目も手も届かない場所で、戦争それが行われている事は知ってる。

 ニュースで見て「ああ、まだ続いてる。早く終わんないかな」くらいなもんさ。

 ゲームでだって何度もプレイしてきてる、その度に何度も何度も死んだり殺されたりだ。


「現実でそれをしたら……未来が無くなるんだっ!その時はいいかも知れない、でも……人の未来も国の未来も……全部失う。それをしたら、崩壊しかないって知ってるからっ!」


「だが……こればかりは」


 分かってる、だから腹立たしいんだ。

 俺には何も出来ない。してはいけないんだ……例え若者が連れ去られようとも、親子の仲を裂かれる瞬間を目撃しようとも、冒険者の仲間になるかもしれない奴らが兵士にされようともな。


 そう納得しようとした俺は、気付く。


「――冒険者?」


「ミオ?」


「……ジ、ジルさん!あの騎士たち、【リューズ騎士団】なんだよな!?」


 俺はジルさんの肩を強くつかんで、凄むように言った。


「あ、ああ……バッジがあるからな。だがどうした急に、痛いぞ」


「……」

(ウィズ!!馬車の反応はいくつある!?……【ステラダ】の中全体だ!)


 ジルさんの肩を離し、俺はウィズに問う。

 すると直ぐに、計算を終えたウィズが。


『五箇所です……順に、ここ中央通り。南南東の商業地区。北東の富裕層区画。南西の住民区画。そして……北北西に二箇所。公園と……【冒険者学校クルセイダー】』


「――やっぱりかよっ!最悪だっ!!」


 これは強制徴兵ちょうへいだ。

 無理矢理、問答無用で国民を集めている……戦える若い男に働き盛りの男親、そして男女問わず、冒険者だ。

 そしてそれは……学生も対象なんだ。


「――ジルさん!ティアたちがヤバいかもしれないっ!探そうっ!」


 ティアとイリアは買い物に戻ってる。

 まだ近くにいるかもしれない、急いで探さないと。


 そうして俺は走り出した。

 ジルさんが「お、おいミオ……」と言う静止も聞かず、夢中で。

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