6-110【選んだ結果3】



◇選んだ結果3◇


 あれ……?

 ミオしか、いない?


「ミオっ!あの、クラウは?」


 小走りで先行した私が、彼に声を掛けると。


「あ、ああ……帰ったよ、急用でさ。それより、イリアはどうしたんだ?買い物は?」


「帰った……ですか?」


「うん。悪いな、姉さんがイリアを誘ったのにさ」


 それはいいのですが、どうしましょう。


「あ、今ミーティアが戻ってきます……ジルリーネさんと言う方と一緒に」


「――ジルさんと?……それはまた」


 ミオは考える様な素振りで周りを見渡しました。

 彼はいつもそう……周囲を見渡す事が多いのです。

 警戒のなのか、それとも癖なのか。


「あ、来たみたいだ……どうするとか、イリアは聞いてる?」


「お話しするようです、なんだか込み入った話のようなので、ご遠慮しようかと言ったのですが、居てくれてと言われまして」


「――なるほど、それならそういう事さ。イリアもその一人って事だよ」


「??」


 どう言う意味でしょう。理解に及ばないのですが。

 私の頭の中が混乱で埋め尽くされている内に、ミーティアがやって来ました。


「ミオ、お待たせ。あれ……?クラウは?」


「あ~っと」


 そうして、ミオは再び同じ説明を始めます。

 後ろにいるジルリーネさんは残念そうな顔を見せて、ミオは少し笑いました。

 どうやら、この三人はとてもいい関係のように……私には見えたのでした。





 広場には子供たちが多く、買い物をしているご両親を待っている感じなのでしょう。

 中には、一人寂しく鳥にパンくずを投げる男性もいて……何故でしょうか、無性にかなしく見えます。

 私たち四人は、屋台で買った飲み物を持って……子供たちの声が聞こえない距離まで間を開けて移動をしました。

 流石さすがに、ミーティアとジルリーネさん二人の話には雑音と考えたのでしょう、ミオが。

 ならば静かな所にでも……と言いたいでしょうが、それも殺風景と言うものらしく、これがベストなのだとか。


「……ジルさん、久しぶりですね。元気……ではなさそうですけど」


「――ふっ……誰かさんの入れ知恵のせいでな。おかげで心労がたたって白髪が出来たぞ」


 ミオの言葉に毒を吐くジルリーネさん。

 いや……物凄く綺麗な銀髪で、まるで分かりませんけど。


「あははっ!そりゃあいい。年相応としそうおうですよっ」


 ちょっ!ミオ!なんて満面の笑顔でそんな事を!

 いけませんよ、特にエルフの女性はそういうのに敏感と聞きます!

 折角、なごやかに話してもらおうと心配りをしたのに!!


 私が、ミオに注意を払っておこうと思います。

 そうして動き出そうとした私の腕を、ミーティアがつかんで。


「……」


 小さく、首を横に振りました。

 「これでいいの」と、そう言いたそうに。

 その直後、ジルリーネさんもその言葉に。


「はははっ、全くだな。わたしもいい年だ……それなら、行き遅れる前にお前が貰ってくれるか?」


「――げっ、いや~、魅力的ですけど、俺にはジルさんはもったいないかな。年上は好ぶ……好きですけど、俺にはティア……ミーティアくらいが丁度いい」


 今、好物って言いそうになりませんでしたか?

 それはいただけません……で、ですがそうですか、年上が好みなのですね、そうですか。

 確かミオは十五歳……私は十七歳です、ふむ……いい感じなので――ハッ!!私は何を考えて……!!

 一度あきらめたのです、何を今更乙女のような……!


 そんな悶々とした私の心の中は、まるでピンク色。

 三人の会話に割って入る事など出来ないまま、時間は過ぎていくのでした。

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