6-111【選んだ結果4】



◇選んだ結果4◇


 やべ……失言しかけたぁ!

 年上が好物って、完全にやべぇ奴じゃねぇか!何考えてんだ俺は!

 俺はそんな不純な男に育った覚えはないぞ!


「まったく、相変わらず適当な事を言うな……ミオ。その調子で、お嬢様にろくでもない事を言ったのだろう?」


「……やっぱ、その話か」


「――ジ、ジルリーネ」


 ジルさんは、俺がミーティアに家から離れる助言をした事をとがめているんだ。

 勿論もちろんの事、立場的に考えれば当然で、家族の安定を考えれば当たり前だ。


 俺はミーティアを制して言う。


「いや、ティア。待って……俺が話すよ。ジルさんも、そのつもりなんでしょ?」


「ああ、ミオに聞いておきたい。今後の事を、お嬢様を……どうしたいのかを」


 ジルさんもそのつもりらしい。

 ミーティアにはもう、言ってはあるんだろう。

 おそらくだけど、俺が村に戻ってる時とかに。


 じゃあ……ウィズ、記録頼むぞ。

 最近出しゃばってこないから、こういう時は仕事だぞ?


『……了解』


 なんだか不安になる返事だが、まぁいい。続けよう。


「ミーティアは、独立します。俺の入れ知恵……まぁ大体正解ですよ。その方がいいと思ったし、成功するって確信もある」


「……大口だな。商会がどれほど大変か、わたしは旦那様を長年見て来て知っている。ハッキリ言って、そんじょそこらの小娘が出来る仕事ではないよ」


 キツイ事を言うじゃないか。

 でも、実際そうなのだろう。

 この国では、女性のリーダーはそうそういない。

 最近、国王陛下が亡くなって……娘であるあの王女・・・・が継いだが、それでも時代が移り行くのはまだまだ先だ。


 男尊女卑だんそんじょひ……まさしく最適な言葉だよ。

 大昔の日本のような国だ。

 だけど、それは異世界では当然……ありきたりな世界だ。


「分かってます。だから俺がいるんですよ……さっきジルさんは言いましたね、ミーティアをどうしたいのかって」


「ああ……」


「俺はミーティアを信じてます。それこそ心から、全部を投げ打ってでも傍にいたいくらい……ほ……――惚れてます」


 ボッ――と、火が出るかと思った。

 ご両親にもまだなのに、まさかジルさんに先に言う事になるとは。

 とは言え、俺にもやらなくちゃいけない事は多い……それこそアイシアやリアの事もある、アイズの事もな。


「……本気、なんだな」


「ええ……結論は正直、まだ時間が欲しい所です、俺はまだ十五のガキですし、ミーティアだってまだ若輩者です――って、年下の俺が言うのは失礼ですけど」


「――そんな事ないわっ、むしろ言われて嬉しいまであるし!」


「え、ええ……」

「お嬢様……」


 咄嗟とっさのフォローなんだろうけど、それじゃあ自分をおとしめるぞミーティア。もしくは……ドMか?

 ほほを赤らめるその顔は、若干の恍惚こうこつさを得ているようにも見えてしまい、少しの不安を覚えつつも……いや。か、可愛いな。


「……ご、ごほん。まぁそんな感じです、俺の現状の目的は第一に、ミーティアの婚約を破棄させる事。第二に、独立をさせる事……ですね。どちらかが叶えば、おのずともう片方も……って見込みです」


 婚約話が無くなれば、ミーティアは晴れて自由の身だ。

 そうなれば夢を追う事も、恋をする事も思うがままなんだからな。

 でもって、独立に成功すれば……地位を得れば婚約だってどうとでもなる。

 むしろ自分から相手を選り好み出来るまである……


「そこまで甘くはない……が。状況は、正直言って……二人に向いているかも知れない」


「「え!?」」


 ジルさんの予想外の言葉に、俺もミーティアも、心の底からのおどろきを見せるのだった。

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