6-60【さいきょーしゅぞく2】



◇さいきょーしゅぞく2◇


 その日の夜、俺は静かに眠った。

 一人で、自分のベッドで半年ぶりに眠ったんだ。


 リアは、何故か……いや、多分EYE’Sアイズだからだろう。

 アイシアに異常に懐いていて、そのままアイシアの家について行った。

 駄目だって言えば泣くし、我慢しろって言えば駄々こねるし……もう子供難しい!


 数十分格闘して、結局アイシアがロクッサ家に連れ帰るという事に決まったのだが、そりゃあもう不安だらけだよ。

 リアがまた暴れ出すことも考えられたし、アイシアを傍に居させてもいいのだろうかと……真剣に考えた。

 そこで助けてくれるのが……【叡智えいち】さんことウィズだった。


『【女神アイズレーン】の会話によりますと、眼を持つ者……EYE’Sアイズの特徴は、その紫に変色する瞳……そして固有の能力です。能力が発動していない時は通常の瞳のままですので、初対面時から紫色だったリアは……常に発動状態だったのでしょう。ですが先ほどは金色でした、それは【竜人ドラグニア】の瞳の色ですので、安定したと言っても過言ではないと思います』


「つまり……?」


『アイシア・ロクッサと共にいても、今すぐに能力が発動する訳ではないと思われます。それはアイシア・ロクッサも同様ですが、彼女の場合の能力は判明していません……リアは予測が出来ますが』


 リアの能力か……それは俺も予測できるよ。


 あの子の戦闘力、それは【竜人ドラグニア】のものだろう。

 それは戦った俺が実感してる。だけど、あの凶暴性は違うはずだ。


「リアのEYE’Sアイズとしての能力は……きっと、狂戦士化ベルセルクだ」


『はい。おそらく』


 アイシアの能力は、分からない事だらけだ。

 直接聞くわけにもいかないし、聞いたところで戸惑とまどうだけだろう。

 なら、アイシアは知らなくてもいい。




 俺はベッドから起き上がり、窓の外を見る。

 そして……自分の両手の平を見て、言う。


「この手に届く範囲くらいは……守れるようにならないとな。アイツにも言われたし、なにより……俺が決めた選択を、アイシアに伝える為に」


 それを宣言する為に、どれほどの困難を乗り越えなければならないのだろう。

 たった一言告げるだけで、俺はそれを失う可能性があるんだ……でも、決めたことをくつがえす訳じゃない。


『……両方選べば?』


「……!……ア、アイズ!?」


 俺は振り返り、その聞こえて来た声に驚く。

 しかしドアは閉じられたままで、当然誰もいない。


「あ、あれ……?」


『どうしました?言葉を述べたのはウィズですが……』


「え、あ……悪い。何て言った?」


『……いえ。聞こえなかったのならそれでいいですが……』


「そうか……疲れてんのかな、俺」


 ベッドに戻り、暗い部屋の天井てんじょうながめながら……思う。

 今聞こえたのは、幻聴げんちょう

 アイズの言葉で、声で……両方選べと言われた気がした。

 両方……それはつまり、ミーティアとアイシア……その両方を選べと、言われた気がしたんだ。


 俺が最ものぞまなかった展開。

 異世界ならではのそんな展開を、一途に“大恋愛の道”を進もうとする俺が選んでいいわけがないと、俺はずっと思っているんだから。

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