6-59【さいきょーしゅぞく1】



◇さいきょーしゅぞく1◇


「ド、【竜人ドラグニア】ぁ??」


 頭の上に疑問符ぎもんふをたくさん並べた俺の幼馴染は、リアと言う名のその少女をまじまじと見る。

 頭を撫でながら、アイシアはリアに。


「そうなの?」


 と、実に簡易的に聞いてみる。

 するとリアは、先程と変わらぬ満面の笑みで。


「うん!さいきょー!!」


 すっげぇ笑顔だ……アイシアによると、このリアって子は九歳らしいが、それより幼く見えるし、なにより言動が幼稚ようちに感じるんだよな。

 日本でいた頃の九歳って、どんな感じだったっけ。


「つー訳だよ。その子に腕を折られたのはマジだし……まぁ俺がその子に怪我をさせたのも本当なんだけどさ。もうその怪我は平気かい?」


「うん!さーいーきょーーー!」


 バンザイをして無傷をアピールしてくれるリアは、本当に平気そうだ。

 でもあれだな……おでこが赤い。

 ひたいに怪我ってしてたっけ?


「はは……そうかい、よかったよ。な?アイシア」


「う、うん……」


 これで分かってくれただろ?と、俺は視線をアイシアに向ける。

 アイシアはまだ半信半疑な感じだが、顎に指を這わせて何かを考える。


「……アイシア?」


「分かった。ミオを信じるね」


 何かを納得したように、アイシアはうなずきながらリアの頭を撫でる。


「そっかぁ……だから一瞬だけ怖かったのかな。ミオを困らせて、ダメだよぉ?」


「えへへ、うん」


 優しくさとす姉のように、慈愛じあいを持った乙女のように、アイシアはリアにく。


「でも、すごいね。このお兄ちゃんをやっつけるなんて……天才っ、よしよし~」


 さとすだけではなく、褒める事も忘れない育児の鏡のようだ。


「なぁリア……どうしてこの村、じゃなくて……こっちの方向に逃げたんだ?」


 ここは聞くチャンスでもある。

 俺はそう思い、リアに聞く。


「……?わかんない?」


 いや、こっちも分かんないから。だから聞いてんだけどな。


「故郷……お家がある方がこっちなのか?」


 子供に質問するの難し!!

 言葉を選びながら、俺は慎重に。


「俺と戦ったのは覚えてるんだろ?」


「……すこし」


 二本の指をちょいんと縮めて、リアは言う。

 本当に少しだけだな、それだと。

 それでも負けたことは悔しいのか、口をすぼめていた。


「今はここに無いんだけど、これくらいの宝珠……玉を探してた?」


 俺は両手で手を丸めて、【オリジン・オーブ】の事を聞く。

 リアが元々持っていたものだし、その可能性もあるだろうと思ったのだが。


「ううん。あれは拾ったの、竜の谷・・・で」


「竜の谷?」


「なんだか物騒な名前だね……」


 俺とアイシアはキョトンだ。

 聞いた事のない名前だ……でも、これは大きなヒントでもありそうな気がする。

 最強種族である【竜人ドラグニア】……そして竜の谷。

 そこが【竜人ドラグニア】の集落とかなら、そこを目指していた可能性が高い。

 帰巣本能と言うか、そんな感じでさ。


「……聞いてみるか」


 知っている可能性があるのは女神だ。

 さっき会ったばかりだし、あんな話をして気まずいが……明日もう一度、会いに行こう。


 【女神アイズレーン】に。

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