6-57【EYE’Sの遭遇4】



EYE’Sアイズ遭遇そうぐう4◇


 時間は少しだけさかのぼる。

 俺が自分の家に来る前、ほんの少しだけだ。


「……」


 無言でアイズの家から出てきた俺は、すぐさまウィズに。


「ウィズ。わりぃ……後半の話、ほとんど入ってない」


『――平気です。【女神アイズレーン】との会話内容は記録してあります』


「そっか……助かる」


 アイズとの話は、正直言って受け入れがたい内容ばかりだった。

 アイシアが、アイズの……【女神アイズレーン】の代替品だいたいひん

 そうなればアイズは死に、アイシアが新しい女神と成る。


「どうしてアイシアが……俺は、どうずればいい」


『紫の瞳を持つ者……通称EYE’Sアイズは、全部で六人いると言っていました。そのうちの誰かが、継承すると。時間は……数年』


 数年。たったそれだけだ。

 その間に、何が出来る?何をすればいい?

 俺に出来る事はなんだ?


『……不明です』


「アイズの真の目的がなにか分からない以上、俺に手伝えることは限られる。ましてや俺は【ステラダ】にいるんだ……村に居なければ手伝えない事は、アイズだって分かってる筈だし……」


 それでも、予測できることはある。

 アイズは、やけに神に……自分たちを毛嫌いしているように見えた。

 特に主神、その絶対的な唯一神を、アイズは憎んでいると思わせるような態度で話していた。


「神は噓をけない。けれど誤魔化ごまかしや冗談は言う……」


 さっきのアイズが、それをしていたとは思えないんだ。


『……すみません』


「……なんでお前が謝るんだよ」


 もしかして、話の間に割ってこなかった理由か?

 それはいいよ……俺が空気を読めって指示してるし、重要なことは記録してくれているんだ。今はそれだけでも大いに助かってる。




 足取り重く、時間を掛けて自宅に着いた。

 ドアに手をかけ、そして俺はピタリと動きを止めた。


「……」

(人の気配……)


 天上人に【超越ちょうえつ】したことで、魔力の反応を感知しやすくなってる。精細な事はまだ慣れないが、家の中に複数の反応がある事だけは分かった。

 それも……家族じゃない物が。


「一人はあの子だ……もう一人は――この感じ……まさかっ!!」


 昨日も会った、今だってその子の事を考えていた。

 一番会わせたくないと、心の底から思った二人。


 同じ存在であるEYE’Sアイズの二人が、鉢合わせしたんだ。


「――アイシア!!」


 俺は大きな声で、自分の部屋に一直線だ。

 反応でどこにいるかはすぐに分かった。

 その反応が隣り合わせだったことも、気付いた。


 あの子がアイシアに危害を加えたかもしれないと、俺は心配になって。

 怒鳴りつけるようにその眼光をするどくさせた。


「ミ、ミフォ……?」


 頬をすぼめられ、発音が怪しいアイシアが、キョトンとした顔で俺を見た。


「……その手を離すんだ。アイシアを……離すんだ」


 俺がさせない。

 アイシアに危害なんて加えさせない。

 もしそうなったら……この子を排してでも。


「……???」


 少女は更にキョトンとした顔で俺を見る。

 マジで理解してない感じだな……それとも、とぼけた振りか?

 あの凶悪な戦闘力を誤魔化ごまかす事なんて、もう出来ねぇぞ。


「ん?」


 しかし俺は気付いた。

 あの少女の異常なまでの殺意も、気配も、魔力も……何一つ感じない事に。

 そしてその少女の瞳もまた、金色になっている事に、俺は気付いたのだった。

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