6-55【EYE’Sの遭遇2】



EYE’Sアイズ遭遇そうぐう2◇


 カチャリと、慎重に開けられた扉の先に……倒れていた人物。

 ミオだと思ったが、音の正体は小柄な女の子だった。


「ミ、ミオじゃなかった……誰?……あ!」


 自分で言って、直ぐに気付く。

 ミオが保護していたと言う、女の子だと。


 アイシアはてっきり、その子は客間で眠っているのだと思っていた。

 まさかミオの部屋で、それもミオのベッドで眠っていたとは。


「ベッドから落ちたの……?床で寝てた訳じゃ、ないよね?」


「……う、ううぅ……」


 その小さな声は、消え行ってしまいそうなほどにはかなく、寒さに震えるようでもあった。


「……だ、大丈――うっ……っ!」


 ズキンズキンと、眼がはじけてしまいそうな痛みが襲ってくる。

 しかし……倒れている少女もまた。


「うぁ……あぁ……い、た……い」


 アイシアは必死に目を開けて、少女を見た。


「……瞳が、光って……この色って……あの人と、同じ」


 村の住人、旅人のアイズ。

 その人物と、瞳の色が同じだった。

 アイシアが心のどこかで恐怖を感じている、その人物と。


 そしてそれは、今の自分も同じだという事に気付かないまま。


「うっ……ああ……」


 少女は、無理矢理起き上がろうとした。

 指先は目一杯力を籠めたのか、爪で木の床が削れていた。


「なんなの、この子……怖い。でも……目が、離せない」


 それは少女も同じなのか、見開いた大きな瞳は……アイシアをとらえていた。


「……ここ、どこ……わ――」


 ズルっ――と、少女は手を滑らせて……顔面を床に強打した。


「――ぎゃぶっっ!!」


「え……えぇ!大丈夫!?」


 血が出ていた。おそらく鼻血だろう。

 ドクドクと流れていた……心配になるレベルで。


「ほら、平気?」


 アイシアは咄嗟に駆け寄り、少女を起き上がらせる。

 ダラダラと流れている鼻血を自分の服の袖で拭いて、綺麗にしてあげると。


「……だぁれ?」


「こ、こっちのセリフだよぉ!?」


 その気の抜けた声に、アイシアは一瞬で警戒を解いた。

 そして少女も、アイシアも……瞳の色を元に戻したのだった。





「ほら、ベッドに座って……お水持ってくるから!」


 無理矢理床から立たせ、ベッドに座らせる。

 小さく軽い身体は、農家できたえたアイシアには軽すぎるくらいだった。


「待ってるんだよっ!?」


 入口から顔だけ出して、言いつけるように。


「うん」


 少女はその言葉にうなずいて、金色の瞳をアイシアに向けた。


「……同じ。いる……ここに」


 小さいが、そのつぶやきはアイシアにも聞こえた。

 何が同じなのか、誰がいるのか……分からないだらけのまま、アイシアは動くしか出来なかった。

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