6-52【そして輪廻は巡りゆく1】



◇そして輪廻りんねは巡りゆく1◇


「今……なんて……言った?」


 信じられなかった。信じたくなかった。

 目の前の女神が言ったその言葉は、受け入れてはいけないもの、俺にはそう取れた。


「もう一度言わせるっての?あたしに、そんな残酷な……神のたわむれを?」


 悲しそうに笑い、アイズは天をあおぐ。

 今言ったアイズの言葉は、アイズ自身をも傷付けるものだ。


「いや……それは。でも……すまん」


「いいわよ。アンタの気持ちも分かる、きっと……他のEYE’Sアイズも同じでしょうから」


 他の……アイズ?


「今言った言葉は、紛れもない事実よ。神の眼……あたしと同じ色の瞳を持った存在が、六人いる……そしてそれらは、EYE’Sアイズと呼ばれる。名前じゃなくて、複数形……ね」


 眼を持つ者たちアイズって事か。


「なるほど」


「でもって……それは神が決めた、クソったれなルールにのっとって進行してるの。今はまだ大丈夫……でも、いずれは」


「いずれ……って、いつだよ」


「――あたしの寿命じゅみょうが尽きる時よ」


「神なのに、寿命じゅみょうがあるのか?」


 アイズは立ち上がり、背伸びをする。

 結構話したもんな……俺も疲れたけどさ、急かすようで悪いが。


「本来の神にはない。でもっ、あたしたちのような準神は違うのよ」


 準神?普通の神とは違うって……いったいそれは。


「現在、本来の力を持った神は……主神様ただ一柱、それ以外の神は、何度も何度も身体を入れ替えた……創られた神なのよ」


「……ど、どうして?」


 神がただ一人、いや一柱か。

 そもそもの数は知らないが、一大事なのは分かる。

 その結果で生まれたのが、きっとアイズだ。


「戦争よ。その戦争で、主神様以外の神は全員消滅したの……そして、寂しくなった主神様は、自分の持つ創造主の力で……準神を創り出した。それがあたしたちのような○○まるまる神……って言う神たちね。あたしやイエシアスなんかがそうよ」


「それじゃあ、なんでアイシアのような……神の眼を持つ人間が?」


 必要になる理由だ。


「……もう一度、言うわよ」


 険しい顔を見せるアイズ。

 言いにくそうにしつつも、もう答えは聞いてしまっている。

 だから理由を……頼む。


「――代替品だいたいひんなのよ」


 さっき言った言葉を、もう一度……今度は俺に向けてしっかりと発現する。


 その冷たい視線は、言いたくなかった事を無理矢理言わされたからか。

 いや……違う。アイズは、その事実に嫌悪感を抱いているんだ。


代替品だいたいひん……?アイシアが?あの【竜人ドラグニア】の子が?い、いったい何の……」


 そこまで言って、俺は気付く。

 【女神アイズレーン】……紫の瞳、EYE’Sアイズ


「アイズがさっき言った……本当の意味は、そういう事……なのか」


「……アイシアは……あたしの代替品だいたいひん。劣化して朽ちていく運命にあるあたしの代わりに、神になる……主神の玩具おもちゃよ」


 それが、アイシアの……EYE’Sアイズの宿命。

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