6-51【瞳の中の真実8】



◇瞳の中の真実8◇


「守る……か。簡単に言うよな、お前」


 俺はジト目でアイズを見る。

 アイズは「アハハ!」と無責任に笑っているが……初めて、コイツの口からまともな事を聞いた気がした。


 それにしても、神の眼か……とんでもない展開だな。

 アイシアがどうしてそんな眼を持ったのか、あの【竜人ドラグニア】の少女もまた、その眼を持っている。

 これは偶然か……?出来過ぎな気がするのは、俺だけか?


「なぁアイズ」


「なぁによ」


「その……神の眼?どれくらい人数がいるんだ?」


 紫色の瞳を持つ、神の眼と呼ばれる存在。

 女神と同色の瞳を持つ存在は、この世界に何人いるんだ。


「……六人よ」


「たったの?」


「たったの」


 オウム返しをするアイズの言葉に、当然うそは無いのだろう。

 しかし、にわかには信じ難い……何せ、そのうちの二人が、今この村に居るんだからな。


「そう言えば、【竜人ドラグニア】の瞳って何色?」


「は?【竜人ドラグニア】……?なにあんた、竜の民まで出会ったの?運いいわね、あの種族は外に出ない事で有名……!――ああ、保護した子って……そういう事かぁ」


 一人で納得してくれたアイズ。

 やっぱり【竜人ドラグニア】は珍しいんだな。


「誘拐されてたみたいなんだよ、その子。今はダメージを受けて、家で眠ってるんだ」


「過剰にダメージ与えたんじゃないのぉ??」


 そ、そんな事ないし……多分、だよな?


『……ノーコメントです』


 その時点で正解なのよ、【叡智えいち】さん。

 でもまぁ、そのおかげで今こうして話が出来てる……うん。そう思う事にしよう。


「それで?なんで【竜人ドラグニア】なのよ、因みに【竜人ドラグニア】の瞳の色は金色よ、昔は高く売れてたってね~」


「……最悪じゃねぇか」


 昔の話とは言え、聞いてて気分のいいものではないぞ。

 だけどそうか、【竜人ドラグニア】の瞳は金色……つまり、あの子も神の眼を持つ存在。

 やっぱり偶然とは思えないな。


「あっ!じゃあ……あの【常闇の者イーガス】の奴ら、あの子の眼を狙ってたのか!」


 高値で売れる貴重な物。

 【竜人ドラグニア】の金色の瞳……それなのに、さらった女の子は紫色の瞳をしていた、だからその身体ごと売ろうとしていたのかもしれないな。


「あいつらは確か、あのアレックス・ライグザールが連れて行ったんだったか……」


 これでは聞き出そうにも難しいか。


「あんた、それ聞きたかったの?」


「それなっ!本題はそこじゃないって……お前が話してくれるか分かんねぇから、慎重になってたんだろうが!」


 呆れるような素振りのアイズに、俺は叫んだ。

 こいつ、俺がアイシアの事を聞きたいと気付いてて言ってんだろ!


「分かってるわよ、そんなに睨まないの……いい男が台無しよ?ま、あたしは前世のアンタを知ってるから爆笑だけど!!ぷーっはははは!くすくすぅ!」


「てめぇっ……女神がその笑い方すんな!各方面から苦情が来るぞ!!」


 ムカつく顔で笑う女神が、非常に腹の立つ限りだが。


「ならもう単刀直入に聞くぞっ、神の眼を持つ六人のうち……一人は、アイシアだな?」


 これだ。

 これを、遠回しに長々と聞いたんだ。

 アイズの機嫌を損ねない様に、ちゃんと話してくれるように。


「……」


「どうなんだ。俺はお前に協力するし、今後も友好的に行きたいと思ってる……だから答えてくれ、アイズ」


 俺は真剣な顔を崩さず、自分を転生させた女神を見つめる。

 アイズも……何かを決めたように、一人うなずき。


「そうよ。アイシアは……あたしの――」


 その言葉を望んでいたのに……その言葉を聞き出そうとしたのに。

 俺はその女神の言葉を、一生忘れないだろう。

 そして渦中の真っ只中にいるのは……何を言おう、アイシアなのだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る