6-48【瞳の中の真実5】



◇瞳の中の真実5◇


 【無限むげん】をもちいて、一気に荷物を外に押しやる。

 掃除と言うよりは、撤去だな。

 村に似つかない家らしく、大きな掃き出し窓からドドドド……と荷物(ゴミ)を外に押し出す。


「お前、なんでこんなになるまでため込んだの。ハムスターかなんかなの?」


「あたしを齧歯類げっしるいなんかと一緒にしないで欲しいわね、これは食べ物じゃなくて……」


「んなこた分かっとるわ!、家ん中に物をため込む習性の事を言ってんだよ!」


 一通り綺麗になり、ベッドが見えた。

 いっその事、【煉華れんげ】で焼き尽くしてやろうか……どうせゴミなんだろうし。


『魔法の道具の判別はウィズが行い、【無限むげん】で燃えない様に調整します』


 ナイス。


「じゃあアイズ。これ燃やすから」


「――は!?」


 外に出したゴミの山を指差して、俺は非情にも告げる。

 ゴミ屋敷の人は大概、これを必要と言うんだ。


「だめだめっ!まだ使うんだからぁ!」


 焦ったように、走り出してくるポンコツ女神。


 ほらね?


駄目だめです。行政は許しませんよ」


 向かって来たアイズの顔面を左手でむんずとつかみ、力を籠める。


「いだっ……いだだあ!痛いわよミオ……って、その力ぁ!」


 俺にアイアンクローを決められるアイズだったが、俺の握力に違和感を覚えたのか、目を見開いて。


「あ、アンタ……マジで【超越ちょうえつ】してんじゃないっ!!ちょっと早いでしょ、あ……寿命削ったわねっ!このバカ!!――いったたたたたた、力を籠めんなぁ!」


 あーうるせ。

 でもそうか、【超越ちょうえつ】したことは分かるのか。

 それなら、それを餌にしてでも……色々と聞き出すぞ。


「ほい終了。お……こんなに魔法の道具残ってんじゃん、どこから仕入れてんだよいったい」


 【煉華れんげ】の炎でちりになったゴミの中に、【無限むげん】に守られた魔法の道具の数々が光っていた。


 パッ――と手を離すと、アイズはちりの中に入って行き。


「ああぁぁ……あたしの」


 がっくりと項垂うなだれ、凹む女神。

 本当に残念な奴だな……この女神さま。


「ほら、いいから中に入るぞ。話すっから」


「ぐぅ……アンタ、少し転生前の性格に戻ってない?」


 そう言えばそうだな。

 でも、それにも理由がある。


「……それも色々なんだよ。クラウ姉さんにバレたし、他にも転生者とかが出て来て、大変だったんだ」


 移動しつつ、俺は少しだけ情報を開示した。

 クラウ姉さんに転生者だと素性がバレた事、ユキナリ・フドウとか言うふざけた転生者が現れた事……力も色々と得て、強くなった事とかな。




「よっこいしょーいち」


「しょうもなっ」


 広くなったリビングに戻り、アイズはオッサンのような口調でソファーに座った。

 今時言わないだろ、そんなセリフ。


「で?アンタはどうするつもりなの?クラウに全部話すの?」


「……分からん。どうするか迷ってる……マジな話、別に転生者だとバレたまではいいんだ。転生前の素性は、知らなくてもいいだろ?」


「……さぁ?どーかしらね、アンタの知り合いかもよ?」


 ふざけた事を言うな。

 そんな確率おかしいだろ……だいたい、転生出来る条件は、天命を全うする事……つまりは寿命を迎える事だ。

 なら、クラウ姉さんだってその可能性が高いじゃないか。


「やめてくれ、それに……俺に知り合いなんてほとんどいないっ」


 俺は苦笑いをしながら、アイズに睨みを入れてやる。

 天上人に【超越ちょうえつ】しても、流石に神様には圧は効かないらしく、アイズは爆笑しながら。


「あっははははは!そね、いないわねっ!」


 他人に言われるとムカつくからやめろや。


「ふぅ……それじゃあ、続き……話すぞ」


 これで、転生者に関してはいい。

 別段、急を要する事はないしな。


 だから、話すべきは……お前の瞳の事だよ、アイズ。

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