6-47【瞳の中の真実4】



◇瞳の中の真実4◇


 ガサゴソガサゴソッ!!

 ゴトンッ!!ドサドサ……ザッザッザ!


「アイズの奴っ!この短い期間でどれだけの物をため込んだんだよっっ!!」


 必死になって、俺は大荷物の中に埋まったポンコツ女神を救助する。

 袋、木箱、食べ物の容器に商品の梱包材。

 ゴミと呼ばれる多くの物が密集して、姿を変貌させ化物モンスターのようだった。


 ピクンピクンと反応する生足は、汚部屋に住んでいるとは思えないほど綺麗で、そこだけ別世界なのではないかと思わせる。

 しかし、汚いものは汚い。


「くっ……なんでここで生活できてたんだよ!誰か掃除してくれてたんじゃないのかっ!?」


 確か、レイン姉さんとかアイシアが率先そっせんしてくれていたと、昨日父さんが言ってた気がするけど。

 これでは掃除など意味もない。やってたとしてもやる気なくすぞ、マジで。


「見えてきた……けどもっ!!」


 もう嫌になりそうな気分だったが。

 俺はアイズらしき人物の足を掴んで、思い切り引っ張る。


「……ぐっ……!つっかえてんじゃねぇか!!このバカっ!!!」


『この現状の計算を終了しました。どうやら、ベッドで就寝していた所に、両端に積み重ねられていた荷物が崩落してきたようです。適当に重ねていたのでしょう、寝相が悪く、ぶつかった衝撃で落下したと思われます』


「ご丁寧にどうもぉぉぉぉぉっ!!」


 力を込めて、思い切り引っ張る。

 もうどうなっても知らないぞ……自業自得だからなポンコツ女神!!


「おおおおおおおおっ!!」


 スッ――ポーーーーーーーン!!


「うおっ……とぉっ!」


 抜け出したアイズは、下着姿だった。

 いきおい良く飛び出して、俺はアイズをキャッチするが、なんとなく。


「……」


 手を離した。

 うん……汚く感じたんだよね。

 分かるよ、多分女神は汚れない……でもさ、汚いだろ、こんな部屋の中で埋もれてたらさ。


「――いだっ!!」


「ああ、生きてた」


 尻餅をつき、更に何かにぶつかるアイズ。

 その衝撃で目を覚ましたようだ。


「あ……ミオ……ミオだわ」


「ええそうです、ミオですけど……何やってんのお前」


「何って……寝てただけだけど、文字通り」


 何が文字通りだよ。どう見ても生き埋めにあった被害者だったぞ。

 アイズは首をコキコキと鳴らしながら立ち上がり、大欠伸おおあくび


(こいつマジで女神なのか……?い、いや、今更か)


 内心で盛大にガッカリしつつ、俺はアイズに。


「なぁアイズ……いろいろと聞きたいことがあるんだ。だから戻って来た……」


「……」


 アイズは無言のまま、俺に背を向けて……なんと下着を脱ぎ始めた。

 俺はサッと視線を外し、互いに背を見せる状態で顔面に手を当てる……マジで空気読んでくれて……頼むから。


 スルスル……と、布擦れ音。

 ガサゴソと、何かを探す音。


 着替えかよ……なら一言くれてもいいじゃん。

 いきなり脱ぐなよっ!


「……ま。ここら辺がその時なのかもね」


「は?……――っと!悪い……」


 アイズの言葉に、つい振り返ってしまった。

 桃のような臀部でんぶを目にして、謝罪をするが。


「なぁに照れてんのよ、アンタみたいなガキに見られて恥ずかしがるわけないでしょ、神よ?女神様よ?」


 ニヤニヤしながら替えの下着に着替え、最近買ったのであろう他国風の服に着替える。【サディオーラス帝国】の行商人か……?

 あ……他国じゃなかったわ。


「そうかよ。なら見るけど」


「いや……それはそれで自重しなさいよっ。と、お待たせ……で?なんだっけ、話?別にいいけど、神は気まぐれよ?噓は付けないけど、真実を言うとは限らないしぃ?」


「別にいいよ、気まぐれでもなんでも……その前に、掃除させろ」


「う~ん!!気が利くぅぅっ!!♡」


 うるせっ、ハートマーク付けんなっ!!

 両手を合わせて俺に媚びた顔をするアイズに腹を立てながらも、俺は部屋を高速で片付け始めたのだった。

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