6-49【瞳の中の真実6】



◇瞳の中の真実6◇


 俺は真剣な顔にシフトチェンジして、アイズを見る。

 その様子にアイズも何かを感じたらしく、フッと笑い。


「へぇ……アンタ、少しは余裕出てきたみたいじゃない」


「そんな事ねぇよ。いつも精一杯さ……ただ、時と場合をわきまえてるだけだ」


 俺が余裕ぶっているように見えるなら別にそれでもいい。

 だけど俺の中では、余裕なんて言葉は一切合切ないんだよ。


「アイズ。お前が言うか言わないか、それは確かにお前の勝手だ。そこにケチをつけるつもりはないよ……でも、なるべくでいい。情報をくれ……この通りだ」


 俺は深く頭を下げて、アイズに嘆願たんがんする。

 アイズは細めた目で俺を見ている。探るように、観察するように……そして、自分の都合通りに進んでいる、神の遊戯盤での絶好の機会かのように。


「――いいわ。出来る限り話してあげる、あくまでも出来る限りよ……」

(まだすべてを話す盤面じゃない。でもこれはあたしにとってのチャンス……この子ミオには悪いけど、あたしの目的のため……利用させてもらうわよ)


 アイズの思惑おもわくなど悟ることも出来ないまま、俺はその言葉を聞いて喜ぶ。


「助かる。じゃあ早速だけど……瞳について聞かせてくれ」


「ひとみ……?眼って事?」


「ああ。アイズ……お前の紫色の瞳、それについて」


 アイズは一瞬だけその大きな瞳を見開いたが、再びいつも通りに戻り。


「あたしの眼……つまり女神の眼についてって事か」

(はは~ん……どこかで会ったわね、アイを持つ者――EYE’Sアイズに)


「ああ、瞳については、【ステラダ】に行って勉強したよ……種族の事とかさ、でも、紫色の瞳については分からない。だから知りたい……今、俺の家には女の子が保護されている……その子の瞳が、紫色なんだよ。アイズと一緒だ」


「なーるほど。でも世界は広いわ、珍しい色の瞳があっても不思議ふしぎじゃ無くない?」


 ソファーで足を組み直し、くつろぐアイズ。


「身近に複数・・いなければな」


「――っ」

(そういうことね。あの子……アイシアの事も気付いたか。厄介やっかいね……近しい存在がかせになるなら、問答無用で切り捨てて欲しい所だけど。まぁミオには無理か)


「どうだ、話してくれないか……?」


「……」

(考えどころね。別に話して害がある訳じゃない……でも、ミオにとってのアイシアは別問題。やる気を出させるには手っ取り早いし、あたしにとってのミオの首輪にもなる……クソったれな主神様のクソったれな神考しんこうが不透明な以上、あたしの時間もない……あぁーもうめんどくさっ)




 どれくらいの時間が掛かっただろう。

 アイズは目を閉じて、腕を組み足を組み、指先を二の腕にトントンと何度もリズムを刻んでいた。

 考えて……るんだろうな。そこまで重要な話だとしたら、俺も少し慎重になるべきだったか?

 ただ単に瞳の色が同じ……だけじゃ、説明にならない。


 アイシアは元から紫の瞳じゃないんだ。

 変質がみられる以上、そこは追及しておきたい。


「……」


「……」


 長い時間だ。

 アイズが考慮こうりょする理由はなんだ、俺に言えない事だとしても、それらしい事で誤魔化すことは出来るはず。

 それをしないと言う事は、少しでも話そうとしてくれていると考えても……いいのか?


「……すぅ~……はぁ。分かったわ、瞳ね……紫の瞳。あたしの眼」


「いいのか?」


 意外だった。こんなアイズの事だから、てっきりふざけ始めるのかと思ったぞ。

 でも、そうか……このアイズの表情、真面目に話してくれるんだな。

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