6-33【竜の血族7】



◇竜の血族7◇


 異常なまでの身体能力、異常なまでの頑丈さ。

 異常なまでの精神力に魔力、異常なまでの破壊力。

 この世界に存在する種族の中で、もっとも強いとされる種族。


 【竜人ドラグニア】。


 こんな幼い少女の一撃で、俺は……また死ぬのか???

 頭部に迫るその拳は、このまま行けば脳天を直撃する。

 だから必死に頭を働かせて、どうすれば生き残れるかを思案した……


 一瞬の中で……どれほどの考えを巡らせただろうか。

 加速する思考の中で、【無限むげん】や【紫電しでん】で回避できるかを模索もさくしたが、どれも駄目だった。

 【極光きょっこう】が防がれている以上、それも意味がない。

 【丈夫ますらお】でもあれだけのダメージを受けるんだ……頭部直撃、絶対に死ぬだろ。

 ウィズも、相当な数の案を検討したが……今の俺では防ぐことは出来ないと、判断した。


 だが……このまま死ねるか!!こんな林の中で、こんな小さな女の子相手に殴り殺される?そんなの――たまったもんじゃない!前世での死に方もろくでもない死に方だったが……二度も女の子に殺されてたまるかよ!!


 もっと、もっとだ……加速しろ、思考を加速させろ。

 考えろ、考え抜け、その選択肢の中に答えが無いのなら……生み出せ!!


 無いのなら……作りだせばいい。


「――ウィズっ!!」


 無理矢理でいい!お前が今解放できる最高の能力を――目覚めさせろ!!


『!!……了解しました――解放します――【超越トランセンデンス】』


 俺の言葉に、ウィズは速攻で行動に移してくれる。

 その瞬間……俺の中で、ガチャンッ――と、何かを無理矢理こじ開けた……そんな音がした。


 その力は……今までの俺を変える力だ。

 今までのチート能力とは違う、選択の出来ない力。

 無理矢理目覚めさせたその越えていく力・・・・・・は……俺の種族、天族そのものを超えさせた。


「――ウ???」


 キョロキョロと、少女は空を切った拳を確認する。


 そんな少女の姿を、俺は真後ろ・・・で視認した。


 気付いた時……俺は少女の背後にいたんだ。

 拳は空を切り、衝撃波となって木を倒した……しかし少女は、急にいなくなった俺を探し、そして見つける。


「……ウ!ウゥゥ!」


 にらむように、身体を震えさせる。


 分かる……これはおびえだ。

 こんな強かった種族の女の子が、急激に俺に恐怖を覚えたんだ。


「これは……なんだ?」


『この世界の誰でもが取得できる能力……【超越ちょうえつ】です。その効果は……種族の進化・・・・・


「進化……【超越ちょうえつ】?」


 最近知った自分の種族……天族。

 まさか、知った次の日にサヨナラですかそうですか。

 確か……天族の上位種は――天上人。


『【超越ちょうえつ】は、数々の条件を満たした歴戦の勝利者が取得する……英雄になるための能力です……それを、無理矢理目覚めさせました』


 身体が軽い……魔力が溢れる。

 種族を超えた先にある……英雄に成り得る力。

 思考もクリアで、全ての答えを編み出せる気がする。


「ウ、ウウ……」


「……ああ、分かってる……もう休ませてやる。怖い思いも、もうさせないから……だから、眠ってろ」


 俺は少女に手をかざす。

 発動する能力は【無限むげん】。


 その――超越した力・・・・・だ。

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