6-29.5【少女の決断1】

※ミオと離れている間のミーティアの話で、各話の間に少しずつ挟まります。

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◇少女の決断1◇


 【ステラダ】に住んでいた一定の住人は、空に走った紫色の稲光を目撃した。

 それは、冒険者学校にいたミーティアもまた同じであり……ミオの力だと、直ぐに分かった。

 それでも、今は自分がしなくてはいけない事を優先して……ミーティアは複数の教官たちに囲まれながら、事情を説明した。


 筆記授業などがない冒険者学校の教官たちは、普段は監視員として駐留ちゅうりゅうしている。

 生徒同士のいざこざや、違反をした生徒を取り締まる為である。

 しかし、この学校の理事長であるエルフの女王……ニイフ・イルフィリア・セル・エルフィン陛下から事前に知らされていた事により、ミーティアの報告を聞いてもおどろくことは無かった。


 しかしそれ以上に、ミーティアが言ったことをそのまま実行するには……問題もある。


 その事実を、一人の男性教官が言う。


「……【王立冒険者学校・クルセイダー】の経営資金源は、【クロスヴァーデン商会】の提供です。これは昔からですが……ミーティア嬢、貴女の言う事をそのまま実行するには……報告はしなければなりませんよ?」


「――はい。承知しています」


 窓から見えた一筋の稲光のも動じず、ミーティアは教官たちの言葉にうなずく。


「理事長が融通ゆうずうを聞かせてくれたことに……何か言う事は?」


 一人の女性教官が、威圧的に言う。

 よく見れば、その女性は耳が長い……エルフだ。

 同じくエルフであり、女王でもある理事長に負担をかけたのだと言いたいのだ。


勿論もちろん融通ゆうずうを聞かせてくれた事には感謝をしています……それは忘れることの出来ない恩です。ですが、その必要がなくなった……それ以上の価値を見出した……だから、私は決断しました。ですので、ミーティア・クロスヴァーデンとして、改めて通うことにしたんです」


 その言葉に、老年の教官が髭をさすりながら。


「う、う~む……ま、まぁ……ミーティア嬢としては正式に学校登録されていますし、それに関しては問題は何もありませんがねぇ……寮はどうするのですか?お家から?」


 ミーティアは首を横に振り。


「いえ……女子寮から通うつもりです。友人が、一人部屋で過ごしておりますので……聞いてみようと思います。その子にはまだ聞いていませんが、不可能でしたら……物置でもなんでも構いません」


 ミーティアはそこまで考えている。

 ミオと離れて過ごす事になるのは寂しいし、残りの半年、一年生のパートナーでもいられなくなる可能性もある。

 だが……ミオがここまでのチャンスをくれた事には、圧倒的な感謝がある。


 そして、その思いに応えたいのだ。


(ミオ……私は私で頑張るわ、だから……あなたも頑張って……)


 窓を見て、ミーティアは改めて覚悟を決めた。

 この秋に……ミーティアは新しい自分をスタートさせる。

 それは女の子として当然だった責務であり、女性として一人の男の子の為に本気になった少女の……夢と恋の物語だ。

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