6-29【竜の血族3】+用語12



◇竜の血族3◇


 【ステラダ】は広い……むやみやたらに探すのは非効率だ。

 何かないかな、探し人を簡単に見つけ出す方法。


『魔力感知を実行……周辺範囲検索……五、四、三……』


 ウィズが何も言わなくてもやってくれました。

 俺が個人でやるより、範囲広いじゃねぇか畜生ちくしょう


『……二、一……終了しました。西南西……五十八キロメートルに、対象の反応を確認。超高速で移動しています、現在も、どんどん進行中』


 小一時間で、約五十キロメートル以上か……一時間でフルマラソン完走。

 マラソン選手も……ビックリどころじゃないなマジで。

 それにしても、魔力の感知って近い距離じゃなかったのか?

 ウィズも能力の高さに、改めて驚愕きょうがくなんだが……


「時速何キロで走ってんだよ……あの子」


 人間離れした身体能力……何だか、今更ファンタジー的な数字を見た気がするな……【竜人ドラグニア】、恐るべし。


「それにしても……西南西?それって、【サディオーラス帝国】の方角じゃないのかっ?」


 俺はすでに走り出していた。

 誰もいない場所まで行ければ、【紫電しでん】で一気に加速してやろう。


『――もしくは、【豊穣の村アイズレーン】かと』


「は!?なんでっ!」


 急停止。

 まさかの回答に、思考が止まりかけた。


『不明です。あの村の近くには、村も町もありません』


 それは知ってる。

 一番近い所で、ここ【ステラダ】なんだからな。


「訳が分からなくて混乱してるって可能性は?」


『ありえるかと』


 暴走って事か……マズいぞこれは。

 急がねぇと。


「ウィズ、あの子の反応付近まで【紫電しでん】をぶっ続けで出来るか?」


「可能です。ジグザグになり、重力の関係で意識が飛ぶ可能性はありますが……」


 それじゃ駄目だめだろ!

 なら、進行上に障害物が無ければどうだ?

 真っ直ぐに、そのまま一直線に進めば。


「ウィズが【無限むげん】で障害物を除去してくれ。俺は【紫電しでん】と【極光きょっこう】に魔力のリソースをく……それで解決だ――【ミストルティン】!」


 俺はまるで木の枝のような杖を出現させる。

 これはかなり魔力を使いそうだ……【ミストルティン】なら、節約も出来るし【叡智ウィズ】の能力の底上げも出来る。


「――頼むぞ相棒、何の被害も無く……あの子に追い付く!!【極光きょっこう】!」


『了解しました』


 そうして俺は、天に向かって駆け……一筋の稲妻いなずまになった。




 ――――――――――――――――――――――――――――――

・【澪から始まる】用語その12

 【叡智えいち】。正式名称――【LostロストChildチャイルドofオブWisdomウィズダム】。

 ミオの精神内に存在する完全自立思考型能力である。

 ウィズの基になったのは【女神アイズレーン】であり、声や性格の思考データが反映されており、時折その片鱗を見せる。

 ミオが苦手とするマルチタスクを得意として、【無限むげん】の超効率化が実現出来る。

 数値を変更して操作する【無限むげん】を、以前使用した数値を直接書き出す事によって、最速で実行する。

 ミオの記憶内にあるデータからロードして使用するため、若干間違っている時もあるが、それはウィズが矯正している。

 ウィズは、ミオが転生した時から語りかけていたが、体力や魔力の未成熟な幼年期では使用できなかったため、この年齢まで待つしかなかった。

 【無限むげん】以外にも、それぞれ能力を分担しており、ミオが何よりも安全に強くなれるように尽力しているが……それはアイズレーンの思惑とも一致しており、ウィズすらも気付かない内に、ミオを強くすると言うアイズレーンの目的を補佐していた。

 ミオの事はご主人様と呼び、機械的な語り口ではなく人間的な所がある為、ミオも一人の人間として見始めている。

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