6-24【君の分岐点3】



◇君の分岐点3◇


 さぁ……ミーティア。

 君の答えを聞かせてくれ……君の進む分かれ道に、俺はいるか。

 それとも、一人で進むのか。


「わた……しは……」


 ゆっくりと手を伸ばす……俺の緑色の瞳を見て、青い眼に涙をためて。

 しかし――


 その手は……静かに下ろされた。


「……ミーティア」


 そうか……そうかよ。

 ここまで言っても、ダメか。


 俺は手を引っ込めて、後ろを向く。

 伸ばした腕が届かない……そんな無力に心を痛めて。


 そして俺が、言葉をはっしようとした……その時。


「……ミオ」


「……ん」


 振り向く。

 キッチンカウンターから出てきたミーティアは、下を向いていた。


「私、馬鹿だった……大馬鹿だった。情けなくて、死んでしまいそうっ!」


 下を向きながら、叫ぶ。

 情けない……その思いは、どちらだ。


「ミオは、ずっと考えていてくれていた……村にいる頃も、この【ステラダ】に来てからも……ずっとずっと。それなのに、私はっ!ミオを振り向かせるって、そうすれば結婚しなくて済む……自由に生きていける。そう考えてた、馬鹿みたいにっ!!子供の頃から憧れてた、大きな商会で上に立つ父には、逆らえない……なにを言っても無駄だって……決めつけて!」


 ぽたりと、我慢していたものが……床に飛び散った。


「覚悟があるかって聞かれた時……正直言って、無いよ……無かったよ!何も考えてないんだもんっ!甘えていたんだもんっ!!家に甘えて、ミオに甘えて、境遇きょうぐう環境かんきょうに甘えて!お嬢様だって言われて守られて、のうのうと過ごして来た……馬鹿な女なのっ!」


 止まらない涙を、両手でおおって。

 しゃくりだそうとすることを必死にこらえて、ミーティアは言葉をつむぐ。


「だけど!!……そんなの嫌っ!何も出来ないまま、結婚なんてしたくないっ!お父様が決めた道を、人形のまま歩きたくないっ!私は私、夢だって叶えたいっ!我儘わがままでいたい……女の子として、ミオのそばにいたい!」


 それは、充分な生きる理由だ。

 夢だって恋だって、それは生きるかてになる。


「……ミーティア」


 さっき俺の手をつかめなかったのは、それをすれば、今度は俺が決めた道を進むことになるから……そう思ったんだな。


 俺はミーティアのもとまで歩み、ポンと頭に手を乗せる。


「……言えるじゃないか、自分の気持ち……病院にいる時の言葉より、胸に響いたよ。伝わった、感じた……ミーティア、ありがとう」


 もう、答えは出た。


「――ミオっ!!」


 ガバッ……と、胸にぶつかる。


「手は取らないわ……引かれるのは嫌。だから……並んで歩きたい。一緒に、共に……未来をっ!!」


「……ああ。行こう……未来に。一緒に……」


 想いの込めた両腕で抱き返す。

 俺の、大切な人を。


 俺が決めた……ミーティアという女の子を。

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