6-16【言葉にして2】



◇言葉にして2◇


 ミーティアが言おうとしている事に対して、俺の中ではもう推察すいさつが出来ていた。

 これはもう、冷静になればなるほど……そうなんだろうな、と感じる事が出来たよ。

 貴族の子息であり、騎士団の団長様。

 ミーティアが無下な態度を取れない、そんな相手。

 それはおそらく……家、クロスヴァーデン商会で決められた……


「あの方は、私の……結婚相手。将来……私がミオを振り向かせられなかった場合の」


 振り絞るように、ミーティアはうつむきながら言う。


「……やっぱりか。そうかな、とは思ったんだ……さっきだけど」


 ミーティアが言えなかったのは、そういう事だ。

 俺を好いていると宣言してくれているのに、他にも相手がいる様に見られるのは、非常に感じが悪い。

 ミーティアがのぞんで決めた事ではないんだろうけどさ……


「――ごめんね、言えなくて……結婚のことも、知られたくなくて」


「どうしてだ?……結婚は親が、ダンドルフ会長がお決めになったんじゃないのか?それを俺が知って、どうして……」


 そこまで言って、俺は気付く。

 ミーティアが言えなかった、言わなかった理由は。


 俺なんだと。


 俺の反応に気付いたミーティアは、悲しそうに笑いながら。


「私が、好きでもない人と結婚するって言ったら……ミオは、どうする?」


「それは……」


 きっと、俺は阻止そししようとするはずだ。

 好きでもない奴となんて結婚する必要は無いと、感情に任せて言うだろう。

 それは誰でも、ミーティアでなくても言うと思う。


 でもそれは、大商人の娘ミーティアには言ってはいけないんだ。


「ミオは、きっと駄目だめだって言うよね……好きでもない人との結婚なんて、そんなの幸せじゃないって」


「……かもな」


 実際、自分の知り合いがそうなったら、俺は反対するだろう。

 だって可哀想かわいそうだ、他に好きな人がいて……そんな子が好きでもない男と結婚するなんて、絶対にしてはいけないと思う。

 でも、その対象は……俺なんだ。


「だから知られたくなかった、だって……ミオなら」


 ミーティアは、俺に同情されたくなかったんだ。

 俺がその事実を知れば、反対すると知っているから。

 村にいるアイシアが俺の婚約者だと知って尚、好きだと公言してくれたミーティア。

 同情を武器にはしたくなかったんだ。


「俺なら、きっと邪魔するだろうな。そんなのは駄目だめだって、阻止そしするかも……な」


 その方法は、俺がミーティアと結婚する事だ。

 でも、ミーティアはそれをのぞまない。


 それをしてしまえば、それは俺を振り向かせたことにはならないからだ。


「そうよね……だから、知られたらいけないと思って、言わなかった」


「うん……それは言えないよな。ごめん、無理矢理に言わせたみたいで」


 ミーティアに取っては俺に知られたくない不利な情報だ。

 俺が、同情でミーティアを選ぶと……思ったんだ。


 容易よういに想像出来てしまう。

 馬鹿な俺が、それを宣言してしまうサマが。

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