5-103【黒き獅子と半端な子1】

※5章ラストpartになります。

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◇黒き獅子と半端な子1◇


 とりあえずの応急処置のような、そんな話し合いを終えて……俺とクラウ姉さんは四人の所に戻る。


「おう、もういいのか?」


「ああ……すんません、時間を取らせて。イリアも……ごめんな」


 オッサンの言葉に俺は謝辞しゃじを向け……イリアにも言葉を掛ける。


「い、いえ……私は」


 俺とクラウ姉さんを何度も往復させる視線は「大丈夫なのですか?」だろう。

 隣にいたミーティアも、心配そうに。


「平気なの?なんだか……クラウも怖かったし、ミオもなんだかいつもと違う感じで……体調とか、大丈夫?」


「ああ……」


 そうとう心配かけたかもな。

 そして、俺と同じことを思ったのか、クラウ姉さんが。


「――二人共、さっきはごめんなさい……もう解決したから、平気よ。ちょっと……出番を取られた事に腹が立ってね」


「「ええ!?」」


 なるほど……俺がした地震の対応を逆手に。

 なら、俺もその案に乗っておこう。


「そういう事だよ。この人……自分が言おうとしたことを俺に言われて、それで怒ってたんだ」


「そ……」


 と言って、口をつぐむミーティア。

 分かるよ……そんな事で?って言おうとしたんだろ?


「いいでしょ別に、気に食わなかったんだから」


 多分だけど……それは本音だろ?

 俺が転生者だって知って、クラウ姉さんも考えは沢山あるはずだ。

 それでもこの状況、この場所でやっていいものじゃないからな。

 自重じちょうしてくれて大いに助かるよ……その分、後が怖えけど。


「ふ、二人がいいならいいのですが……ね?」


「う、うん……そうね」


 二人は納得してくれた……なら、後はクラウ姉さんに任せていいな。

 俺は、ロッド先輩とグレンのオッサンのもとに行く。


「……何してんすか?」


「おうミオガキ……さっきの揺れだがな」


 オッサンの言葉に、俺はうなずく。

 そうだ……揺れは間違いなく地下から。

 そして地下には【アルキレシィ】がいるであろう場所だ。


 ユキナリの奴が、【アルキレシィ】に向かっている可能性がある。

 あいつが受けた依頼は、【ハバン洞穴】で採掘できる鉱石の調査だ……言ってしまえば、そこまで奥深くに行かなくとも達成できる。


「ああ。あの揺れは人工的なものだよ、多分だけど……ユキナリ・フドウだ」


 オッサンは大きな穴……ユキナリの奴がくりぬいた穴を見ながら、ボサボサの髪を搔いて言う。


「あれほどの揺れは人生でも初めてだ……人間でもおどろくんだぞ、鋭敏な魔物ならどうなる……?」


「――!……まさか」


「そのまさかの可能性が高い。【アルキレシィ】ほどの亜獣なら、余裕で気付くだろうよ……例えば、寝ていたり飯を食っていたりしたら」


「……ムカつく、よな」


 出来れば穏便おんびんに近付いて、急襲を仕掛けたかったのだが……


「急ぐしかなさそうだな……行くぞお前ら、ミオガキは女子どもにも声かけろ……クレザースの坊ちゃんは、準備を手伝ってくれるか」


「了解っす」

「分かった」


 そうして、当初の想定は軽くくつがえされる。

 俺は女子三人の所に再度向かい、急ぎたいと話しに向かうのだった。

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