5-60【紹介1】
◇紹介1◇
その日の昼……ミオがアクセサリーショップ【
ミオの相棒であるミーティア・クロスヴァーデンは、実家である【クロスヴァーデン商会】の本店に
「……」
「……」
「……お、お嬢様、なにもそこまで怒らなくても……」
「……」
ミーティアは現在、非常にむくれている。
普段のお嬢様たる態度も形無しの、実に女の子然とした態度だろう。
しかし、それには大きな理由があるのだ。
「お嬢さ――」
しつこいくらいのジルリーネに、ミーティアは。
「分かってるわ……これは私の話だもの。お父様に言われたから、ジルリーネだって行動したのでしょうし、それを責めるつもりは
「それは……感謝します」
安心したように、最高級の
光を当てても変わらず、影に隠れても暗くなりにくい……少し変わった髪質。
「それで……お父様は
そうだ……ミーティアは家に帰ってくるまで、普通にジルリーネとお茶をするつもりでいたのだ。
それが
家に入った時、
その時点で、お茶はない……気付いた時には、入口付近をメイドたちに
ハメられたのだ……父親に。
「……大変言いにくいのですが、直接的に言えば……お嬢様は来ないと思ったのではないでしょうか」
その答えに、更にムスッとするミーティア。
「……」
しかし、ジルリーネの言葉の通りだ。
もし今回、父親であるダンドルフ・クロスヴァーデンからの申し出で帰宅を迫られていた場合、ミーティアはきっと無視をしただろう。
なにせ、これから行われるミーティアの予定は――二年に迫った約束を守らせるための……貴族とのお見合いなのだから。
◇
私はジルリーネに髪をセットしてもらい、メイドに囲まれて
肩や胸元がパッカリと開いた、少し派手なドレスだった。
合わせて
ジルリーネによってウェーブをかけられ、これではまるで貴族の
しかも、怒っていて顔が怖いから悪役みたい……自分でもおかしくなってしまいそう。
「お綺麗です、お嬢様」
ジルリーネが言う。
こんな状況でも、ジルリーネの言葉は本物だ。
例えお父様の命令で私を呼び出したとしても……彼女を責めるつもりはない。
「……嬉しくないけど、ありがとう」
本音を言えば、今すぐにでも帰りたかった。
お父様は自分で言いもせず、ジルリーネを使って私を呼び出した。
その方法が好きじゃない。
これから会う人物は、きっと私の結婚相手なのだろう。
誰かは知らないが、二年後……正確には一年半後に、私がミオを振り向かせられなかった時の――相手だ。
怖さは
どんな脂ぎった貴族のおじさんだろうか……と、何度も何度も考えた。
貴族の男性だという事は知っていたが、その名前も……どんな容姿なのかも、私は知らない……今日、初めて会うのだから。
しかし、今日ここに来なければ、それもまだ先延ばしに出来たはずだ。
それでも来てしまったのは、私の考えの甘さか、それともお父様が一枚上手だったのか……考えずとも、後者だろう。
「……はぁ……行きましょうか」
「はい、お嬢様」
私は部屋を出る。
向かう先は、お父様がいるであろう客間……そして私の相手も、もう来ているはずなのだ。
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