5-53【緑風艶石】
◇
その緑色の石は、地球で言う所のエメラルドなのだろう。
綺麗に
熊のおっちゃんが加工したんじゃないとすれば、きっと専門の技術を持った人が居るんだろうな……この宝石箱の中身の石は、どれもが加工済みのものだったし。
「エメラルド……?」
「ん?いや、そんな名前もたまに聞くが……こいつの名前は【
【レバメール】ってのは確か、北方の地域の町だったな。
ジルさんとの勉強で聞いた覚えがある。
石が採掘出来るってことは……鉱山の町なのか、【ポラ】の町と似た感じか?
「風の加護ってのは?」
加護……おそらく魔力の事なんだろうけど、
これは聞いておきたい。
「おうよ。【風霊シルフィード】様が加護を与えた、風の力を持つ石だ」
【風霊シルフィード】……精霊の一種で、簡単に言えば――シルフなんだろうと予想がつくが……やっぱり、いるんだな。
そう言った精霊みたいな存在もさ。
「なるほど……それで、この石は魔力を増やしてくれんの?」
そう……どんなに凄くても、どんなに安くても。
最大の問題はそこなんだ。
「いや、どちらかと言えば……魔力の消費を抑えてくれる、って感じだな」
「へぇ……」
ふ~ん。いや、でも……
その有用に気付いた時点で、俺はこの石をアクセサリーに組み込むことを決めていた。
「――よし、ならこれにするよ。色味も綺麗だし、少しでも魔力を抑えられるんならそれでいい。それに、イリアに似合いそうだし」
ハーフエルフって言うくらいだし、なんとなくシナジーを感じるよな。
エルフとシルフってさ、物語によっては同一の存在だったりもするしな。
語呂がいいからだろって?……おいおい、言ってやるなよ。
「ミオの
「助かるよ、おっちゃん」
俺は一言、熊のおっちゃんに礼を言うと、店を出る。
さてと……次はどうするかな。
イリアの自主練に付き合うにしても、全てが
それにしても、宝石の価値がやばいな……下手すりゃ億万長者になれるっつうのに、普通に一般素材扱いだもんなぁ。
宝石にもピンからキリまであるだろうけど、俺の目には高級品に見えたね。
地球じゃ何十万や何百万って値を張りそうなものばかり……盗んだ奴だって、きっとろくでもない転生者だろうよ。
この世界で売れない時点で、意味は無いのにな。
「ん……?」
帰り道……男子寮に到着する直前に、転生者と出くわす。
俺の知ってる転生者なんて、クラウ姉さんと……もう一人しかいない。
そして男子寮って言うなら……一人しかいないよな。
「――おお!ミオっち!」
俺を見かけて、手をブンブンと振る黒髪の男。
「……ユキナリ・フドウか」
自分を堂々と日本人と宣言する黒髪の男。
名前はユキナリ・フドウ……丁度いい、ラッキーな事にこっちは一人。
クラウ姉さんもミーティアも居ないのなら、俺も多少は自由に話せる。
前から思ってたんだ……こいつからもさ、色々と聞いてみたかったんだよな。
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