5-49【ミオVSイリア3】



◇ミオVSイリア3◇


 イリアの今後の課題は、武器と……【念動ねんどう】の操作、そして最大魔力だな。

 魔力の方はアクセサリーショップのおっちゃんに頼んだ物があるから、それを待つとしてだ……武器はどうかな。


『現在のキルネイリア・ヴィタールの装備は投擲とうてきてきしていませんので、現装備を改修するか……変更する事を勧めさせていただきます』


 だよなぁ……イリアはあの剣気に入ってんのかな?

 そうじゃなければ、ブーメランのように戻って来る【念動ねんどう】をするにはやっぱり合わないだろ。

 ガントレットの性能のおかげで、キャッチアンドリリースは出来るようになった……それだけでも充分なのに、今のイリアは【念動ねんどう】の操作までうまくなってる気がするんだよ。


 成長いちじるしいねぇ……


『残念ですが、装備の効能です』


 言うなって。ハーフエルフであるイリアだって、それはきっと分かってるよ。

 それでもすがっって、必死になって足搔あがいてるのさ……努力を無駄にするようなことは言うもんじゃないぞ、ウィズ。


『……つとめます』


 おう、それでいいさ。

 さてと、そんな事を脳内で言いながらも、実はまだ訓練は続いている。


 今は接近戦の最中だ。


 俺はイリアの双剣の攻撃を【極光きょっこう】でいなしながら、【念動ねんどう】にだけを気を付けて対処している。

 相変わらず刃物が迫る度に心臓がビックビクだけど、【極光きょっこう】の防御性能が高すぎて、安心を覚え始めるくらいには余裕を持てていると思う。


「ミオは!凄くっ!強いです!ねぇぇぇ!」


 バチン――!バチン――!!と、何度も【極光きょっこう】の光にはじかれつつも、イリアは連続で攻撃を仕掛けてくる。

 【極光きょっこう】の光は接触時だけ虹色の光を発生させるのだが、それがなんとも神秘的。

 だけど、夜には使えない気がする……派手過ぎて。


「そりゃどうもっ」


 大振りの一撃をけて、俺はイリアの腕をつかんでひねる。

 そうすることで……グルンと回転して、思い切り尻を打つイリア。


 ドスン――


「痛っ……いっ!」


 それでも反対の腕を振るい、反撃してくる。

 俺は身体だけを倒して回避するが、イリアは手に持っていた短剣を投げていた。


「おっと……!随分ずいぶん慣れてきたみたいだなっ!」


「おかげさまで!当たってくださいよ!!」


「やだねっ!」


 そう簡単に当たったら、調子に乗っちゃうでしょうが!


 背後から迫る短剣に……イリアの腕を離し、跳躍ちょうやく

 いきおいは物凄い。今から軌道きどう修正するにしても難しいだろ。

 短剣はそのまま俺の居た位置……イリアに向かって飛んでくる。

 こういう対処もしていかないとな。


「わっ……!」


 ガギン――!!っと、イリアは反対の剣ではじいた。

 いやいや……そこはキャッチしなさいよ。

 咄嗟とっさの対処には不慣れなんだな……想定していなかった可能性もあるけど。


「どんどん行くぞイリアっ!――【極光弾オーラショット】!」


 イリアが起き上がる前に、連続で魔力弾を打ち込む。

 ちなみに魔力を防ぐには魔力を使うしかないので、イリアには少し難しい……ならば回避、と言いたいところなのだが。


「きゃっ!くっ……ぅ」


 ドン!ドドン!!――地面に着弾する魔力弾の衝撃で、イリアには多少のダメージが入る。


「直ぐに起き上がれば済む話だぞイリア!【念動ねんどう】を防がれたからって動揺すんなっ!」


「――くぅ……はいっ!!」


 意地で起き上がって、再度短剣を投げる。

 今度は二本同時だ。いけるのか?


「……」


 お……っそい!!

 ヒョロヒョロ~とする短剣は、魔力が尽きたのか……ストンと地面に突き刺さった。


「む、無理でしたぁ……」


 ぜはぁぜはぁするイリア。


「よ、よし……じゃあ終わりにしようか」


 終了だな。時間的には……数十分か。


 やっぱり今後の課題は最大魔力だな。

 【念動ねんどう】は魔法ではないとは言え、【無限むげん】なんかと一緒で魔力は消費されるわけだしな。

 そんじゃあ……昼にでも熊のおっちゃんの店に行ってみるか。

 昨日の今日で、アクセサリーが出来てる訳はないだろうけど。

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