5-48【ミオVSイリア2】



◇ミオVSイリア2◇


 俺が蹴り上げたイリアの短剣は上空でクルクルと回転して、不規則に動いている。

 イリアが操作しようとしているのだろうが、実に面白い動きだ。

 UFOかよっ!


「さぁ、どうするイリア!このままなら練習にならねぇぞっ!?俺も・・イリアもなぁ!」


 俺の分かりやすいあおりに、イリアは歯を食いしばって後退し。


「――剣!!」


 あ、そう言って操作すんの?

 イリアの短剣は掛け声に応えるように、不規則な動きから急激にいきおいを取り戻して、所有者のもとに戻っていく。

 なんだ、出来んじゃないか。


 そう、問題はここだ。

 【念動ねんどう】の操作性、そしてガントレットがキチンと役目を果たすかどうか……それがこの訓練の課題なんだからな。


「いいぞ!その調子だ……!」


 だけど、邪魔が入ればどうだ?そのまま動けるか?

 ……狙いはイリアの足元、当たらなくてもいい。


「――【極光弾オーラショット】!」


 俺はイリアの足元に魔力の弾丸を打ち込む。

 【念動ねんどう】の操作に集中するイリアは、俺が邪魔をするなんて考えなかったのか、微動だにしなかった。


「え……きゃっ!!」


 ドン――!!と、足元の地面に着弾した魔力弾は破裂し、イリアの左足を沈めた。

 あれ……?威力ありすぎません?俺、そんなに魔力込めてないけど。


『――これくらいしなければ意味がありません』


 お前かよ!……って、そんな事も出来んのか。

 すげぇな【叡智えいち】さん。


 ん?……いやいや違う、威力を勝手に上げんなよ!!

 俺がイリアに向けてたらやばかっただろ!?


『その場合は威力を下げますが……なにか問題がありますか?』


 くっ……あーそうですか!俺の杞憂きゆうですかそうですか!

 やべぇ……的確なせいでレスバが強すぎるこの能力ひと


 そんなこんなの数秒間。イリアは崩れた足場に手をついて体勢を整える。

 しかし、空いた手は宙に伸びたままだった。

 しっかりと操作しているようだ。


「お……ちゃんとしてるじゃんっ」


 その伸びた手の先には、短剣が戻ってきている最中だ。

 邪魔をされても操作は出来ているようで、今……イリアの手に戻る。


「おおっ!」


 パシッと短剣のをキャッチし、反動も無く見事に衝撃を殺したガントレット。

 なんだろう、普通に俺も感動したんだが。


「や、やった……!」


 イリアも初キャッチに感動しているようだ。

 それにしても……吸い込まれるように手に収まったな。

 短剣がキャッチの瞬間に挙動きょどうが変わんなかったか?


『――ガントレットの性能です』


「イリア、ナイス!もう一度だっ!」


「はいっ!」


 そのいきおいのままに、イリアは再度短剣を投げる。

 今度は俺に向けて、直接攻撃に転じてきた。

 しかも早えし。


「あぶっ!」


 仰け反ってけると、反転した世界で短剣が俺の顔面目掛けて戻って来る。

 マジか……イリア、お前意外と動かせるじゃないか。


 だけど、そう簡単に上手くはいかせねぇよ。


「――【砂の壁サンドウォール】!」


 仰け反ったまま、俺は【無限むげん】で砂の壁を作り出してイリアの視界をふさいだ。

 操作している短剣が見えないなら、お前はどうする?


「あっ!!み、見えないっ!あ~!!そ、操作が……!」


 イリアは途端とたんあせりだして、俺からは丸見えの短剣は目的を見失って地面に刺さった。

 やっぱり、まだまだ修行は欠かせなさそうだな……頑張ろうぜ、イリア。

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