5-46【成果3】



◇成果3◇


 俺がプレゼントボックスを渡すと、ビックリした顔で俺を見てくるイリア。

 当然か……あまりにも速すぎるもんな。

 ミーティアも朝におどろいてたし。


「――これって、え?もしかして……昨日のですか?」


 リボンをほどき、ふたを開けての第一声だった。

 俺の顔を見るその眼差しは、好奇心と……疑問だ。


「どう、かな……?」


 黒と銀のメタリック。

 明らかに女性の細指の為のサイズでととのえられたそのガントレットは、昨日とは別物だ。

 しかし、面影はある……と思うんだけどな。


 俺の不安気な問いに、イリアは。


「――とても綺麗です……でも、昨日はあんなにもびれていたのに、一日もたずにここまで鮮麗せんれいになる……ものなのですか?」


 ご、ごもっともで。

 どうしよう、【叡智えいち】さん助けて!


『――自信満々に答えればよろしいかと。有無を言わさず、断言で封殺してしまえばいいのです』


 なるほど!自信でゴリ押す訳か!よっしゃ。


「ああ!そういうもんなんだ!」


「……そ、そうなんですか?す、凄いですねっ!流石さすがミオですっ!!」


 その言葉も視線も、純度の高い水のようだった。

 なんてクリアな視線を向けるんだイリア……純粋すぎて、心が痛いんだが。


「……で、どうかな?気に入って貰えたか?」


 とにかく、疑問はらせたからそれでいいさ。


「――はいっ!とっても綺麗で可愛いです!」


 か、可愛い……かな?


 どちらかと言えば、シックでノスタルジックな感じを出したつもりなんだけど。

 女の子の感性が分からん……カッコよくないか?よくない?


「そ、そっか……それならよかったよ。じゃあ、試着してみてくれ」


「はいっ、喜んでっ!」


 パァ――と、イリアは満面の笑みで返答し、箱の中からガントレットを取り出す。

 ははは……いい笑顔だよ。

 そんじゃあ早速、装着イベントでも始めるとしますかね。





 【キルネイリア は ガントレット を そうびした。】


 そんなゲーム的ノベルが出てきそうな状況に……装着したイリアは。


「わぁぁぁ!軽い!動きやすいっ、まるでピッタリと張り付いているようですっ!」


 イリアは空手の突きを繰り返すような仕草しぐさで、ガントレットを確認している……何度もグーパーをして感覚を確かめ、俺を見る。

 何というか、凄く無邪気だな……意外だ。


「どうだ?違和感とか、気に食わないとかあったら、今からでも調整できるけど?」


「――そ、そうなんですかぁ!?」


 本当におどろいたように、両手を上げて言うイリア。

 いや、リアクションがコントなんよ。


 そんな可愛いらしいリアクションのイリアに笑う俺だが、【叡智えいち】さんが言う。


『――調整の必要はありません。ウィズの【無限インフィニティ】は完璧です』


 はいはい……どうせ俺の【無限むげん】の使い方は効率悪いですよ。

 でも【叡智えいち】さん、【無限むげん】を自分の物のように言うのは心外だぞ。


 俺は【叡智えいち】さんの言葉を無視しながら、イリアに言う。


「ああ。必要・・ならな……どうする?」


 “必要”と言う言葉を強調する。

 イリアは、確かめる様にガントレットを確認して述べる。


「……いえ。必要は無いと思います……不思議ふしぎですけど、これはもう、私の身体に最適になっているとしか思えないんです……まるで、何年も愛用しているようですから」


 よかったね【叡智えいち】さん。


「そっか。なら……次は実践だな。確かめて見ようぜ?」


 俺はそう言うと、右手に光をまとわせる。

 キラキラとかがやく虹色の光……【極光きょっこう】だ。


「――は、はい!お願いしますっ!」


 イリアも気合が入ったようで何よりだ。

 さてと、【叡智えいち】さんの頑張りの成果を見せてくれよ、イリア。

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