5-45【成果2】



◇成果2◇


 ミーティアは準備をしてから出かけるらしいから、俺の方が先に部屋を出た。

 向かうのは女子寮……では無くて、今日は最初から訓練場に行ってみようと思う。


 小脇にプレゼントボックスをかかえて、男子寮を出て校内へ向かう。

 地続きになっている訓練場に向けて足を運ぶが……やっぱり、今日も生徒は少ないな……三ヶ月後に試験があるらしいから、皆必死になって依頼(サポート)を受けているんだろう。


 試験、言わば一学期の期末試験だな。

 一年生の場合、半年に一回……四月から九月のまでの依頼サポートの点数に応じて、課題が出されるらしい。


 難易度はA~Eの五段階。

 それぞれクラスで出される課題は違い、まぁ対魔物クラスの俺たちは十中八九、魔物討伐だろうと踏んでいる。

 ちなみに、俺の現在の点数は実に中途半端である。

 序盤の低い点数が響いているが、それはもう関係ないと割り切った。


 その結果、点数は後から付いて来て……今はまぁまぁな数まで到達している。

 取りあえずあせる事はない点数だと、ミーティアと二人で納得したよ。


 そして現在、探しているイリアだが……俺たちよりも点数は圧倒的に低い訳で、このまま行けば、おそらく退学処分となる。

 だから、試験の前に【アルキレシィ】との戦いを急ぎたいんだ。


 グレンのオッサンは夏までに強くなれと言った……そして今は夏になる直前、なんとか九月の試験までに、イリアに目的を果たさせてやりたいな。

 そんな心配になる張本人……キルネイリア・ヴィタールを探す俺は、訓練場に入ると早速。


「……イリア、おはよう」


 案の定イリアがいたよ……屈伸運動をしていて、動く気満々だ。

 ガントレットがまだなくても、運動して体力でもつけようとしてたんだろうか。


「――ミオ、おはようございます!は、早いですね……」


「おう」


 こっちのセリフなんだが。


「今日はミーティア……あ、トレイダはいないのですか?」


 ミーティアイコールトレイダの気遣いを見せてくれるイリアだが、ここには誰もいないし別にミーティアでもいいんだぞ?


「ああ。用事があるんだってさ、俺と二人だと気まずいだろうけど……まぁ勘弁かんべんしてくれよ」


 俺は冗談交じりに自虐じぎゃくして、笑顔を見せる。

 するとイリアは立ち上がり、俺の正面まで一気に迫って言う。


「――そ、そんなことはありませんっ!」


「……お、おう」

(近い近いっ!顔がちけぇよ!)


 俺は必死なイリアのフォローを聞きつつも、気恥ずかしさに視線をふさぐ。丁度ちょうどいいものを持っていたからな。


 イリアのガントレットを入れたプレゼントボックスだけどさ。


「――あれ、えっと……これって」


「ああ。調整が終わったんだよ……受け取ってくれ」


 気付いたイリアに、俺はそのまま顔を隠して箱を渡す。

 なんだかプレゼントボックスにアテレコしてるような気分だな。


 気に入ってくれるといいけどな。

 さてと、どう転ぶかな……このガントレット。

 俺はイリアに箱を渡し、その様子をうかがうのだった。

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