5-44【成果1】



◇成果1◇


 その日の夜は、一人でさびしく食事をして……いつの間にか眠っていた。

 もう爆睡だったよ、気付いたら朝だったくらいには寝たな。


「……やけに気分がすっきりしてんなぁ」


 起きて背伸びをすると、やけに身体が軽かった。

 朝の鬱屈うっくつした気分なんてない、さわやかな一日の始まりだった。


「……」


 ちらりととなりのベッドを見ると、ミーティアがスヤスヤと可愛い寝息を立てていた。

 早起きのミーティアがまだ寝ているってことは、時間は相当早いな。


 昨日は、あの後どうしたんだろうか……三人で女子会でも開いたのかな?

 そう思えば、ついて行かなくて正解だったぞ。

 その空気に耐えられる自信がない。


 スクルーズ家は女系だが、俺と父さん二人共そういう時は空気だからな。

 他の街に来たって、同じになるに決まっているのだ。


「んん~~……っと」


 身体を伸ばして、洗面所へ向かう。

 顔を洗いワンルームリビングに戻ると、ふと試しに紅茶をれて見る。


 いい香りだし、中々にいい出来ではないだろうか。

 鼻を茶葉の香りが通り抜ける……俺も出来るじゃないか。


 しかし……飲んでみると。


「……うん、ミーティアがれてくれた方が圧倒的に美味い」


 当たり前だよな、俺はただ茶葉にお湯掛けただけだもん。

 あきらめた。俺にはモーニングティーの才能はない。


 数十分後、起きてきたミーティアに新しい紅茶をれて頂きまして、飲み直しましたよ……非常に美味しかったです。慣れない事はするなってね、反省。





 朝のひとときも、終わりが近づく。


「今日のご予定は?」


「――ん?」


 まだ若干眠そうなミーティアから聞かれた。

 俺はティーカップをソーサーに置いて、答える。


「今日はイリアの所に行くよ、あれを届けないとな」


 俺が視線を送るのは、ちょっとだけ豪勢になったプレゼントボックスだ。


「え……やっぱりあの箱そうだったんだ。もう修繕しゅうぜんし終わったの?」


 ミーティアは帰って来た時にでも見たんだろうな、箱を。

 購入時とは違ってるんだし、当然か。


「ん~まぁ、そういう事だよ。速い方がいいかと思ってさ、だから昨日は疲れたのかな」


「あ~、だから私が帰って来た時にはもう眠っていたのね……熟睡だったよ?可愛かったっ、えへへ」


「……や、やめてくれよ」


 俺は顔の前で手を振る、ブンブンと。


 は、恥ずかしいだろ。

 そんな可愛い笑顔で言うのは勘弁してください。


 なんにせよ、イリアは今日どうすんだろうな。

 昨日は訓練で魔力も体力も相当使っただろうし、回復に時間がかかる可能性もある。


「私は今日は一緒に行けないけど……イリアは喜んでくれるわね、きっと」


「ん?なにかあるのか?」


 ミーティアは、今日は別行動か……


「ちょっとまた、家に帰るの……別に急用でもないんだけれど、ジルリーネが話があるんですって……昨日帰りに会ったのよ」


 へぇ、ジルさんか……俺もしばらく会ってないな。

 でもまぁ「一緒に来てくれ」って言われないってことは、俺はイリアこっちを優先しても大丈夫そうだな。


「そっか。大丈夫なんだ……よな?」


 念のためにな。


「ええ。きっとありきたりなお話しよ……ミオはイリアに届けてあげてね?」


「ああ、分かったよ」


 配慮助かるよ、ミーティア。

 よしっと……それだけ聞ければ問題はないな。

 俺とミーティアは別行動だけど、それぞれやる事があるんだ……仕方がないさ。


 さてと!……紅茶を飲んだら、早速イリアに会いに行くとしようかね。

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