5-43【組み合わせて初めて完成したもの】



◇組み合わせて初めて完成したもの◇


 【無限むげん】と【叡智えいち】の親和性は、二枚貝のようにピッタリと組み合わさり、初めて本来の形態へと進化した。

 俺にはそう感じたんだ……それほどまでに、二つの能力の相性は抜群だと思えた。


 【無限むげん】を使用する際の演算処理を、【叡智えいち】は肩代わりしてくれる。

 一度使った状態で保存された情報は、同じ物体に使う際に情報を読み込むことで、即座に発動されるという訳だ。

 それは、何度も何度も同じ作業をしなくてもいいという事でもあり、魔力の消費までもを大幅に減少させてくれる事となった。

 更には、まだ使った事もない物体に【無限むげん】を使用する時も、俺が脳内で想像する事で、【叡智えいち】が勝手に情報を補正してくれる。


 イリアの為のガントレットがその証拠しょうこになったな。

 今回、俺は想像しただけだ……【叡智えいち】さんが俺の脳内から想像した情報を一瞬でロードし、【叡智えいち】さんが得た情報を組み合わせて、【無限むげん】を発動した。


 その結果が、この綺麗になったガントレットだ。

 サイズもイリアの為にピッタリに合わされ、専用装備と言っても過言ではないだろう。


「……すげぇな。単純にすげぇよ」


 魔力の消費はほぼ無しで、時間も一瞬に等しい。


『初めから数値を指定すれば、わざわざメモリをいじる必要性もありません』


 俺の今までのやり方とは正反対だ……俺は数値を変更して、スライダー操作をする形で動かして来ていた。

 だけど【叡智えいち】さんは、情報と予測だけで、数値を書き込む形なんだ。


「なるほどな、それなら確かに一発だ……瞬きしてたる内に終わっちまうもん」


 正確には二秒ほどで、一瞬とは言えないのだが……それでも今までの時間の何十倍も早い。

 俺も少しは操作に自信があったんだけどな……流石さすがにチート能力、失敗もなさそうだ。


『当然です。なにせ……【叡智えいち】なもので』


「――はいはい。助かったよ」


 俺はガントレットを元々の箱に入れる。

 しかし……途中で思いつく。


「【叡智えいち】さんや、箱もオシャレにしちまおうか」


 購入時の質素しっそな箱よりも、もっとオンリーな物にしたいな。


『了解しました――【無限インフィニティ】』


 一瞬だけ光り、小箱はプレゼントボックスへと変わった。

 素材は一緒だが、質が違うという訳だ。


「ナイス」


 その真新しくなったプレゼントボックスにガントレットを入れ直して、適当にひもを結ぶ。【叡智えいち】さんも俺の意図を理解して、俺が言う前に。


『――【無限インフィニティ】』


 ひもはリボンに早変わり。

 手品師もびっくりの早業だ。


 一瞬でひもの情報が書き換わり。

 丸く細いひもは、薄くなった。

 素材は一緒なのにな。


 そのリボンをプレゼントボックスに結んで。


「さてと、これは明日イリアに届けるとして……」


 という事で、やる事なくなったな。

 自分で【無限むげん】を操作しなくてもいいのは大助かりだけど、これって俺のやる事半減したんじゃ……――いや、違うな。


 ああそうだ、違う。

 この事象じしょうを、違うベクトルに変えるんだ……もっと強くなるために。

 【無限むげん】が【叡智えいち】と言うサポートをて進展したのなら、俺にももっと目指す所がある筈だ。

 これから……それを探していこう、それが……俺の進むべき道だ。

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