5-42【無限と叡智3】



無限むげん叡智えいち3◇


 もう、【叡智えいち】さんが出来る能力やつなのは分かっているんだ……そんなの当たり前だろ?だってレベル99だぞ。

 本来の転生者は能力レベルが1の状態で転生するらしいが、どこぞのポンコツ女神のおかげかせいか……俺の能力は全てレベル99って事らしい。

 他の転生者からしたら「なんだそれっ!」って総ツッコミを受けそうだが、俺が知った事じゃない……言うならアイズレーンに言ってくれよ。


「それじゃあ、始めるか。準備とかいるの?」


 俺は知っていて聞く……準備なんて必要ある訳ないんだからな。

 だって、使用する魔力のみなもとである俺が、準備万端なんだから。


『問題ありません。今すぐにでも実行できます』


 おーおー、言うじゃん……分かってたけどさ。

 それじゃあ見せて貰うぜ、レベル99の【叡智えいち】の力。

 精々、【無限むげん】を有効活用してくれよ?


『――ではご主人様は、想像を』


 想像……つまり、ガントレットの完成形を考えればいいだけか。

 そうするだけで、過程を関係なくすっ飛ばして完成させてしまうんだろうな。


「了解だ」


 俺はびたガントレットを見ながら、イリアが装備している姿を想像する。

 アンティーク調の見た目が好みらしいイリアには、この素材を活かした見た目にしないとな……だけど、今回は実用性を最も重視しなければならない。


 このままではサイズ感が合わなさすぎる。

 試着した時も思ったが、これはおそらく男性用……少年騎士って感じがするな。

 だから、サイズはピッタリに近い感じがいい。

 ガチャガチャした感じじゃなくて……そうだな、日曜朝のヒーローのようなピッタリ感がいいかもしれないな。


 俺は目を閉じて、ぼう仮面のヒーローや、複数のレンジャーを想像する。


『――戦隊ですか?ライダーですか?』


 【叡智えいち】さんはそこまで知って……ああそうか、俺の記憶を読み込んでんのね。便利なこった……ってか、俺がぼかした意味よ。

 まぁいい……それじゃあ、ライダーでいこうか。

 金属感を残しつつ、軽さは最小限。

 サイズは指に張り付く感じで、だけど曲げても干渉かんしょうはしない。いいな?


『ロード……完了』


 おおうのはひじまで行かない付近、手首から腕の間だな。

 剣の遠心力に負けない衝撃吸収、事故っても指を斬らない強度と収束性しゅうそくせい……こんな感じだ。

 さびを落としたら何色かな……イリアの好み的に、銀色や黒がいいだろう。


『――完了しました』


「え……?」


 マヌケな声を出した俺が目を開けると、そこには――もう完成したガントレットがきらめいていた。


 時間にして……二秒。

 たったの二秒だ。


「なぁ?魔力の消費がほとんどねぇんだけど……」


 完成したガントレットを持ち上げて確認する。

 めちゃくちゃ軽い……【カラドボルグ】もビックリの軽さだ。


『魔力消費は、ご主人様が想像した完成形から一括いっかつで読み込み、それを反映した事で極力抑えられています。ウィズの使用魔力……消費は1です。そして【無限インフィニティ】の消費は……1です』


「……マジかよ」


 合計しても魔力消費が2。今までの【無限むげん】からは考えられない。

 俺が自力でガントレットを操作していたら、何十何百……そのくらいの魔力消費だっただろうな。

 今までの俺がどれだけ無駄な【無限むげん】の使い方をしてきたのかが分かる一コマじゃないか。


 転生して十五年。完成したという事だ……俺の能力、【無限むげん】が。

 【叡智えいち】と言う相棒をて――究極の低燃費チート能力に。

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